学校を責めてはいけない! 全国学力・学習状況調査について

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全国学力・学習状況調査について語っておきたい、元公立学校教員のぴーちょこです。

2007年より、全国・学力学習状況調査が始まりました。いろんな物議を醸しだしてきましたが(今もですが)、やはり結果について騒がれます。

秋田県や福井県はなぜ結果がよいのか…テレビで放送されていたこともありました。

ふと、現職の頃を思い出していたら、当時は全国学力・学習状況調査について、いろいろと思うところがあったなあと思い出しました。ということで、「学校を責めてはいけない!」という思いで、記事にまとめていきたいと思います。しばらくお付き合いください。

目次

都道府県別のランキングにこだわりすぎだ!

全国学力・学習状況調査について、情報公開の是非についてずいぶん議論されたものです。そして、都道府県別の正答率が公開されると、これまた世の中を騒がせました。

秋田県や石川県、福井県の正答率が高いのは〇〇だからだ!などと騒がれ、一体どういう教育をしたら好結果が出るのかと話題にされたものです。

しかし、私は結果を見て思うのです。47都道府県の差はそれほど大きいのか?と。以下の結果は、「Education Career」様のHPより引用させていただいております。以下の表は、2019年度の全科目の平均正答率を出し、小学校と中学校を合わせた都道府県別正答率をランキング化したものです。

さあ、1位から順に正答率を見ていって、何を感じますか?

2019年度 全国学力・学習状況調査 都道府県別正答率

順位都道府県名正答率(%)
1秋田県69.33
1石川県69.33
3福井県68.92
4富山県67.25
5東京都66.25
6青森県65.75
7愛媛県65.58
8山口県65.42
9静岡県65.25
10大分県65.17
10京都府65.17
10広島県65.17
13新潟県65.00
14茨城県64.83
15香川県64.58
16兵庫県64.42
17群馬県64.17
17岐阜県64.17
19三重県64.08
20福岡県63.83
20埼玉県63.83
20神奈川県63.83
23山梨県63.67
23長野県63.67
23長崎県63.67
26岩手県63.58
27山形県63.42
27鳥取県63.42
27岡山県63.42
27栃木県63.42
31千葉県63.25
32和歌山県63.17
32高知県63.17
34愛知県63.00
34徳島県63.00
36宮崎県62.83
37鹿児島県62.75
38奈良県62.67
39福島県62.58
39宮城県62.58
41沖縄県62.50
42北海道62.42
43佐賀県62.33
44島根県62.25
44熊本県62.25
46大阪府62.17
47滋賀県61.83
「Education Career」のHPより引用(一部表示形式を変更)
 https://education-career.jp/magazine/data-report/2019/ranking-achievement-test-2018/

個人的には、この結果を見て、基本的に、日本はどの都道府県へ行ってもほぼ同じ質の教育が受けられることを証明していると感じます。

1位から47位までの正答率が10%以内におさまっています。つまり1位と最下位の差はムチャクチャ大きいわけではない。むしろ、全国の公立小・中学校の先生が学習指導要領に基づいて頑張っているから、一定程度の水準が保たれていることがわかります。でも、それについてはあまり触れられない。

もちろん、上位の成績を収める都道府県で働く先生方の頑張りは、すばらしいものだと思います。日頃から、子どもたちの力を伸ばすために尽力されているのでしょう。

ぴーちょこ

最下位だからといって、びっくりするほど悪いわけじゃないよね。

それでも、やはり結果の差が出ています。しかし、結果は教師の教え方だけで決まるのではありません。次はそのことについて、私が思うことをまとめていきます。

公立といっても、学校によって大きく環境が違うYO!

私は、大阪市長の発言に腹が立ちました。そう、吉村知事です。

ぴーちょこ

でも、新型コロナ対策では、リーダーシップを発揮していて応援しています。でも、それとこれとは別問題です(笑)

小中学生が受ける全国学力調査の結果を校長や教員の評価に反映させるとする大阪市の吉村洋文市長の意向を受け、市教委は14日、新しい評価制度を今年度内に策定すると明らかにした。新制度は2019年度の試行を経て、20年度に実施し、21年度のボーナスなどからテストの結果を反映させるという。
朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASL9G61RSL9GPTIL01F.html より一部引用

大阪市としての結果が悪かったということを受けての発言ですが、現場をわかっていないと残念な気持ちになりました。良くない結果の原因は、現場の先生方だけにあるのでしょうか。市の責任はないのでしょうか。市長の責任はないのでしょうか。そもそも責任追及をすることで、結果の向上が見られるのでしょうか。まず、他にも学校教育のためにやることがあるような気がします。

ぴーちょこ

ボーナスに影響するなら、バレない程度の不正を行う先生や学校が出てきちゃうかも…。

学校単位でみれば、同じ市内でも確実に結果は違います。なぜなら、公立の学校は、学校によって大きく環境が違うからです。上から指示を出す人は、以下の現状まで踏まえ、なおかつ自分も現場に来て授業をしてから意見を述べてもらいたいものです。調査の結果=教員の指導力と安易に結び付けてほしくはありません。

学校規模が違う

児童・生徒数が少ない小規模校と大規模校を比較します。1学級10人のクラスと、40人のクラス、どちらも担任は一人です。1クラスの人数が30人も違えば、一人一人に関われる時間が大きく違います。

ぴーちょこ

ぴーちょこは、1クラス13人から、41人のクラスまで担任したことがあります。学習への労力はメチャクチャ違うよ!

人数が少なければ少ないほど、手厚く指導することができます。授業の進め方はもちろん、プリントの採点にかかる時間も少なくて済みます。時間ができるので、一人一人の習熟度に合わせて対策を練る余裕もできます。

学級の人数による違いは、本当に大きいと感じます。学習塾で、「個別指導型」の塾がたくさんあるのも、理由を考えればすぐにわかることです。

地域の環境が違う

経済的に苦しい家庭が多い地域

経済的に苦しい家庭が集まっている地域があります。しかし経済的に苦しくても、多くの保護者が、わが子のために一生懸命学校に協力してくれます。経済的に苦しい家庭の子の全てが、学力的に低くなるとは思っていません。

ただ、裕福な家庭の子と違い、いろいろな習い事をしているわけではありません。塾へ通ったり家庭教師をつけてもらったりすることも難しいかもしれません。家の手伝いで、家庭でゆっくり勉強できない環境の子もいるかもしれません。

また、保護者が仕事で忙しく、宿題を見てもらえなかったり、自宅での学習に関わってもらえなかったりと、学習する環境が整わない子もいます。

つまり、学校以外で学習する環境が違うのです。

子どもたちの学力を伸ばすためには、生活の基盤となる家庭は大きな意味をもちます。経済状況が子どもの学力に影響しないとは思えません。

そうした経済的に苦しい家庭が比較的多い地域と、裕福な家庭が多い地域は確実に存在します。就学援助費や生活保護を受けている割合を学校ごとに出していけば、比較できるはずです。

外国籍の児童が多い地域

地域によっては、外国籍の児童の割合が多い学校もあります。例えば、校区やその近くに外国人を積極的に雇用している企業があれば、その付近の小中学校には外国籍の子が増えます。

下の表は、2018年の学校基本調査をもとにした都道府県別小学校外国人児童数です。「都道府県別統計とランキングで見る県民性」様のHPから、一部表示方式を変えています。

2018年度 都道府県別 小学校外国人児童数
順位都道府県名総数(人)1000人あたり(人)
1愛知県875821.04
2三重県194720.48
3群馬県200819.90
4静岡県328617.06
5岐阜県181816.85
6東京都987316.20
7埼玉県506113.58
8滋賀県99412.08
9神奈川県546211.84
10千葉県373911.84
11茨城県169311.74
12山梨県46011.26
13栃木県106810.58
14大阪府42999.79
15長野県9759.03
16富山県4418.66
17兵庫県18726.45
18広島県9746.42
19福井県2666.36
20京都府7465.92
21香川県2114.13
22島根県1383.97
23石川県2183.66
24福岡県9333.32
25奈良県2153.10
26岡山県2232.21
27沖縄県2212.18
28鳥取県501.73
29愛媛県1181.70
30山口県1131.66
31福島県1431.59
32新潟県1731.58
33熊本県1481.51
34宮城県1731.48
35北海道3551.46
36佐賀県631.39
37徳島県481.35
38山形県701.31
39大分県741.25
40高知県331.00
41和歌山県400.87
42青森県460.79
43秋田県330.77
44宮崎県460.75
45長崎県410.58
46鹿児島県510.56
47岩手県300.51
全国597479.30
「都道府県別統計とランキングで見る県民性」のHPより引用(一部表示形式を変更)
 https://todo-ran.com/t/kiji/24197

1~5位を見ていただくと分かる通り、東海地方に外国籍の児童が多くいます。

さて、上記のデータをもとに、2019年の小学校国語の正答率と順位を当てはめたものが以下の表です。小学校の外国籍児童の調査が2018年度で、国語の調査は2019年度で同年度ではありませんが、参考にはなると思います。

外国人児童数と国語の正答率との比較
順位都道府県名1000人あたり(人)正答率(%)順位
1愛知県21.0459.0047
2三重県20.4864.0023
3群馬県19.9065.0017
4静岡県17.0665.0017
5岐阜県16.8563.0033
6東京都16.2065.0017
7埼玉県13.5864.0023
8滋賀県12.0861.0042
9神奈川県11.8461.0042
10千葉県11.8463.0033
11茨城県11.7466.0012
12山梨県11.2662.0038
13栃木県10.5864.0023
14大阪府9.7960.0045
15長野県9.0364.0023
16富山県8.6668.005
17兵庫県6.4562.0038
18広島県6.4266.0012
19福井県6.3672.002
20京都府5.9266.0012
21香川県4.1365.0017
22島根県3.9762.0038
23石川県3.6672.002
24福岡県3.3265.0017
25奈良県3.1060.0045
26岡山県2.2164.0023
27沖縄県2.1868.005
28鳥取県1.7363.0033
29愛媛県1.7067.009
30山口県1.6668.005
31福島県1.5964.0023
32新潟県1.5868.005
33熊本県1.5161.0042
34宮城県1.4862.0038
35北海道1.4663.0033
36佐賀県1.3964.0023
37徳島県1.3563.0033
38山形県1.3166.0012
39大分県1.2567.009
40高知県1.0064.0023
41和歌山県0.8764.0023
42青森県0.7970.004
43秋田県0.7774.001
44宮崎県0.7564.0023
45長崎県0.5865.0017
46鹿児島県0.5666.0012
47岩手県0.5167.009
全国9.30
「Education Career」のHPより一部引用
 https://education-career.jp/magazine/data-report/2019/ranking-achievement-test-2018/
ぴーちょこ

愛知県の結果が際立って見えるね…。

正答率は同率の物が多いので、表の右側の順位は参考程度に見てください。

断定はできませんが、やはり外国人児童が多い都道府県ほど、国語の正答率が低いように思われます

外国籍の子といっても、日本の子と遜色ないくらい学習についていける子、日常会話は全く問題ないが日本語の読み書きが困難な子、日常会話から個別に指導が必要な子と、状況は違います。

もちろん、日本人の子であっても学力的に日本語の指導が必要な子もいます。外国籍の子だからといって、どの子も日本人の子どもより日本語が理解できていないわけではありません。

私が勤務してきた学校、関わってきた子どもたちを見ても、日常会話はほとんど問題がありません。しかし、読むこと、書くことについては個別に指導が必要な子が多くいました。

中学校に勤務していた時、外国籍の生徒に国語の個別指導をしていました。やはり、漢字が難しいらしく、小学校3~4年生くらいの漢字から繰り返し練習させました。漢字と絵カードを使った練習もたくさんさせました。

ただし、全国学力・学習状況調査の実施にあたって、上記のような取り出しをしている児童生徒については、その該当教科について調査の対象としないことが可能です。

(6)日本語指導が必要な児童生徒に対する配慮

日本語指導が必要な児童生徒については,原則として,他の児童生徒と同様の授業を受けている児童生徒について,調査の対象とする。ただし,例えば,国語,算数・数学,英語の時間に取り出し指導を受けているなどの事情がある場合は,当該教科を調査の対象としないことを可能とする。なお,調査を行うに当たっては,各学校の判断により,調査時間の延長,ルビ振り問題用紙の使用などの配慮を可能とする。

(平成31年度全国学力・学習状況調査に関する実施要領より一部抜粋)

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/zenkoku/__icsFiles/afieldfile/2018/12/27/1411767.pdf

取り出し指導を受けていれば、調査を受けないことも可能と書いてありますが、受けさせないということではありません。きっと、現場の先生は、可能な限り配慮をしながら受けさせているように思います。

こうした外国籍の子どもが多くいる学校があるという状況も踏まえて、結果を考える必要があると思います。

ぴーちょこ

でも、多くの人は結果の数字だけにとらわれちゃうよね…。

生徒指導が大変な学校もある

生徒指導が大変なことを持ち出してはいけないという意見があるかもしれません。しかし、生徒指導が大変な学校(特に中学校)は確実に存在します。

生徒の問題行動への対応に追われて、授業どころではない学校だってあります。夜遅くから家庭訪問をして、それが終わってから今後の対応のために会議、気付いたら日付が変わるという日もあるのです。

学校が荒れている、落ち着かないのはなぜかという議論はひとまず置いておき、とにかく平和に授業ができない学校もあるのだということを知っておいてほしいと思います。

学校の状況に左右されず、きちんと学習に取り組めている子ももちろんいます。しかし、落ち着かない学校の学力が高いかどうかは、教育に携わっている人でなくても想像はつきますよね。

調査の結果は、学校、家庭、地域のこれまでの教育の結果だYO!

もはや見出しの通りです。全国学力・学習状況調査の調査結果は、学校、家庭、地域のこれまでの教育の結果だと私は思っております。もちろん、学校が占める割合が大きいのは当然です。しかし、学校だけではないということを考えてもらいたいのです。

調査結果は担任の責任?

私が小学校に勤務していた時の話です。調査結果を受けて、6年生の担任の先生が落ち込んでいました。話を聞いてみると、昨年度の6年生より多くの項目で良くない結果だから責任を感じるということです。しかし、考えてもみてください。6年生の担任の指導力不足なのでしょうか。

違いますよね。

  • 調査が行われるのは4月だから、6年生になってほとんど日がたっていない。
  • 6年生になるまでに、複数の担任、さらに多くの教員に教えられてきている。

この2点から、調査は多くの教師が関わってきた結果であることがわかると思います。

もし、校長が「今年の6年生はどうなっているんだ!」と6年担任に言ったら、「あほですか」と言い返したいです。もちろん、そんな校長に出会ったことはありません。

ぴーちょこ

もしいたら管理職失格ですな。

途中で学級崩壊があった学年かもしれません。逆に、ベテランや授業の上手な先生との関わりが深かった学年かもしれません。多くの教師が関わってきた結果なのです。だから、6年担任が落ち込む必要はないと思います。

その先生は、結果を受けて何とかしてやりたいと考えていました。結果を残念がり、卒業までに力を伸ばしてあげたいと決意する教師のなんとすばらしいことか!そういう教師に担任してもらえた6年生は幸せだったと思います。

別の話になりますが、学力テストを行うと、初任者のクラスがよい結果になる場合があります。結果に喜ぶのはよいのですが、自分の手柄だと思い込んでしまったらアウトです。

ぴーちょこ

恥ずかしながら、ぴーちょこがそうでした。自分の手柄だと勘違いしていました。ごめんなさいm(__)m

学級編成の時点で、初任者に負担がないようにと、指導が難しい子は外されている場合が多くあります。配慮されているクラスだったからと謙虚に受け止められる教師は、さらに伸びていくと思います。

家庭と地域の協力を得る

すでに述べましたが、調査の結果は学校だけのものではありません。家庭と地域の影響も受けています。そのために、調査結果は公表し、協力を得るべきだと思います。

児童質問紙からは、家庭での生活が見えてきます。早寝早起きができているか、朝食をきちんと食べているか、家庭学習はできているかなどの結果から、家庭にお願いしたいことが出てきます。

地域の行事に参加する児童生徒が少ないことがわかれば、地域に協力を依頼することも考えられるでしょう。

学校環境の整備が不十分であれば、市町村役場に相談する必要があるでしょう。市長村長は、学校の応援者であってほしいものです。

まとめ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。思いつくまま書いてきたので、話が二転三転してしまいました。私が言いたいことをまとめます。

都道府県別ランキングにこだわりすぎていけない

結果を真摯に受け止めて、改善していくことはとても大切なことです。しかし、ランキングそのものにこだわりすぎていけないと思います。こだわりすぎると、調査結果のためだけに、以下のようなことが起きてしまうかもしれません。

  • 対策と称して、過去問にたくさん取り組ませる。(普段の授業はどうするの?)
  • 調査中、間違っているところを教師が指摘してしまう。(こっそりと)

もし、全国学力・学習状況調査の結果がボーナスに反映されるとしたら、教師による不正行為が出てくるかもしれませんよ?この調査の目的は、教師を追い込むことではないでしょうに。

最後に。

全国で頑張る先生方を、国が都道府県が、教育委員会が、そして家庭や地域がしっかりバックアップすることを期待しています。先生方の本業である「学習指導」に集中して取り組める環境になりますように。

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この記事を書いた人

元教員。
公立の小中学校で20年間勤務した経験を生かし、今をがんばる先生方を応援するサイトを作っていきます。

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