教員の主な仕事は何ですか?と聞かれたら、もちろん「授業」ですよね。
教員であれば、だれもがよい授業をしたいと思います。でも、ただ漠然と授業をしていても、決してよい授業ができるようにはなりません。
では、どうしたらよいのか。よく、「授業の上手な先生のやり方を見せてもらうといいよ」と言われます。教育実習生や新任教員はそう言われることが多いでしょう。
しかし、実際のところ、見ただけではどこがよいのかわからない場合が多いです。どうしてかというと、どういう授業がよいかという知識がないからです。
ギターを弾いたことのない人が、いろんなテクニックを駆使するギタリストの演奏を見ても、どこがどうすごいのかわからないですよね。
そのためには、授業を進める上での基礎的な知識を得る必要があります。どんな授業がよいのか知っていれば、授業が上手と言われる先生の授業を見て、具体的なよさを目で見て実感できるでしょう。
そんな知識を得ることができる本として、一番おすすめするのが、向山洋一著「授業の腕をあげる法則」です。
向山洋一氏の法則化運動について、いろいろ言う人がいますが、この本の内容は文句のつけようがありません。何度読み返したことか…。
「授業の腕をあげる法則」をおすすめする理由
内容が簡潔で具体的
まず、向山氏の文体の特徴なのですが、極めて簡潔で具体的、つまりわかりやすい文章を書かれる人だという印象です。しかし、短くはっきりと言い切る表現が不快だと感じる人もいるのかもしれません。
でも、内容はものすごく具体的で、何をすべきかよくわかります。
教員界は、精神論で語ろうとする教員がいまだに結構いるように思います。精神論で語るとは、
- 算数ができない子には、熱意をもって休み時間に個別指導をしてあげよう
- 漢字が苦手な子には、他の子より多めに宿題を出そう
- 逆上がりができない子がいたら、子どもたちみんなで応援してあげよう
などなど。別にこういうことが悪いとは言いません。でも、普段の指導がこれだけだったら、子どもたちはできるようになると思いますか。ならないですよね。
向山氏は教員を医者に例えています。
「三日間、高熱が続いているのです」と言ったとき、医師が「それは、つらいでしょうね」という優しさを示してくれるだけで満足するだろうか。(中略)つまり、医師は「医療活動をする技術なり方法なりを持っている」ことにおいて専門職なのであり、「技術・方法」を駆使して、患者の病気と闘ってくれるのである。教師も同じである。教師も、「そういう場合はこのような方法があります」という「教育の技術なり方法なりを持っている」ことにおいて、専門職なのである。
「授業の腕をあげる法則」向山洋一著 明治図書より一部引用
この本は、実際にどうしたら授業がうまくなるのかという「技術・方法」がまとめられている本です。ですから、読んだ内容を明日にでもすぐ実践できるのです。
「授業の原則」は、教育活動全般に必要な原則
この本のタイトルは、「授業の腕をあげる法則」です。「授業」とタイトルに入っていますが、この本の内容は、授業だけでなく、教育活動全般に必要な原則がまとめられています。
もっと言えば、「人を動かす原則」ととらえてもよいのかもしれません。それくらい、大切なことがまとめられています。
授業の原則として、以下の10項目にまとめられています。
- 第1条 趣意説明の原則
- 第2条 一時一事の原則
- 第3条 簡明の原則
- 第4条 全員の原則
- 第5条 所時物の原則
- 第6条 細分化の原則
- 第7条 空白禁止の原則
- 第8条 確認の原則
- 第9条 個別評定の原則
- 第10条 激励の原則
この10原則は、教育における不易の部分だと思います。初版が1985年の本ですが、今もこれからも大切なことが書かれています。
「授業の腕をあげる法則」を読んで気になったところ
この本を読んで気になったところは、先述のようにこの本を読んで不快に感じる人もいるだろうということです。
向山氏の文体が、簡潔で具体的と述べました。それ以外にも、ダメな教師のことをズバッと紹介しています。それと同時に、向山氏の成功例やご本人の活躍談などが出てきます。
私なんかは、自分の不甲斐なさに気づき、がんばろうと思えたものですが、この本を読んだ別の先生は違う感想をもちました。それは、「なんか自分に酔っていて宗教っぽい」という感想です。
結論をズバッという人は、批判も受けやすいですよね。ホリエモンとかもそうなのでしょう。
ただ、こればかりは実際に読んだ人の感想なので、何とも言えません。
ただ、繰り返しになりますが、この本にまとめられている10個の「授業の原則」は、教員なら絶対知っておくべき知識です。
この「授業の腕をあげる法則」は、ものすごく多くの人に読まれている本なので、学校にあるかもしれません。また、持っている先生がいるかもしれません。まだ読んだことがない先生は、学校の職員図書を探したり、職員室の先生に聞いてみたりしましょう。