先日、ある新聞記事に学校プールの話題が取り上げられていました。
その記事には、現在学校が直面する学校プールの課題と今後の予測が書かれていました。
実際、学校プールはどうなっていくのか、元教員の立場から現場の声を交えながら、予測や希望をまとめていきたいと思います。

学校プールの課題
まずは、学校プールの課題を挙げていきたいと思います。
教員の視点から、実際に感じることを紹介していきます。
維持管理が大変
まず、プールの維持管理が大変です。
プールの維持管理では何をしているかというと、
・毎日の水質管理(塩素濃度、pH値など)
・循環ポンプや、ろ過器の管理(計器類の確認、定期的に逆洗)
・プールサイドの清掃
・温水シャワーの管理
・プールに使用する消毒剤の管理
・プールの安全確認
など、細かく上げると多岐にわたっています。
問題なのは、日常的にプールの管理をするのが教員ということです。専門家ではない教員がプールの管理をしています。
中学校であれば、体育の教師がプールの維持管理をしていることが多いでしょう。何年も経験のある体育教師であれば、ある程度プールの維持管理についての知識を積み上げてきていると思います。
しかし、小学校の場合は、その年の体育主任が中心となって管理をします。教員になって2年目で体育主任になったとしても、前年度の体育主任から引き継いだことをもとにやらなければなりません。
ぴーちょこ私も体育主任になったとき、全く分からない中やらなければならない上、他の教員へはプール管理の説明をしなければならず、大変でした。
プールの維持管理について、私が個人的に一番問題だと思うのが、
専門家ではない教員がプールの維持管理をするのに、問題があった時に管理責任を問われること
です。
私が勤務してきた学校で、実際に起きた問題を紹介します。
金曜日の水泳の時間に給水したまま、授業後に止水を忘れる。そのまま月曜日まで気が付かず、20万円以上の水道代がかかった。
学校薬剤師が水質のチェックに来た時、残留塩素濃度が低くほとんど塩素がない状態であったため、体育主任が指導を受ける。なお、この体育主任はこの年に体育主任になったばかりであった上、任せきりにされており周りのサポートがなかった。
早朝、プールの安全確認で見回ったところ、プールの中にビンが投げ入れられているのを発見する。水質の安全が確認できないので、この日の水泳の授業は中止した。(事前に気付いたため、問題にならず)
教師にとってのリスクが大きい上に、教員の仕事といえるのか疑問です。
水泳の授業ができるか天気に左右される


各学校では、水泳の授業が実施できる気温や水温の基準を決めています。(学校によって若干の差はあり)
私が勤務していた学校では、気温が25℃以上、水温23℃以上あれば実施でした。
この基準を満たさないと実施できません。当然、荒天時も実施できません。
しかし、体育の授業は時間割に組み込まれています。また、プールの使用割の都合上、他学年との兼ね合いもあるので簡単に別の日に実施できません。
また近年は、あまりの猛暑のために、暑すぎて危険だから実施できないということも増えてきました。
このような状況から、授業時間の確保の問題が生じてしまいます。
子どもたちの安全への配慮が大変


水泳の授業で最も気を遣うのが、安全に実施することです。
水泳の授業は命の危険があります。
もちろん、通常の体育においても安全への配慮は必要ですが、水泳の授業はさらに慎重に取り組む必要があります。
安全に実施するために、以下のようなことをします。
・指導する教員と監視する教員とに分け、多くの目で見る。
・子どもたちの健康チェックを行う。小学生は水泳カードを使用することが多い。
・泳力別に分け、無理なく泳げるようにする。
・バディを組み、子どもたち同士でも安全確認をさせる。
・適度に休憩をとり、長時間連続で泳がせない。
・飛び込みや潜水をさせない。
・教員は水泳の授業の前に、救命講習(AED、心臓マッサージ)を受ける。
安全に気を付けていても、事故が起こる可能性はあります。
学校プールや水泳指導で変化してきたこと
私が20年以上教員をやってきて、学校プールの授業も変化してきました。
簡単に紹介していきます。
着用する水着や帽子の自由化
「スクール水着」という言葉あるように、昔は全員同じようなスクール水着を着用することが当たり前でした。
また、帽子も泳力によって色が分けられているのが当たり前でした。


でも、現在は以下のように変わってきています。
・水着は泳ぐのに支障がなければ、色や形は自由
・水泳帽の色も自由
・ラッシュガードの着用も自由
・ゴーグルの着用も自由(というか、目の保護のために推奨されることも)
泳げない子に対して、夏休みの個別指導
水泳の授業が苦手な子どもはいます。昔は授業で25m泳げなかった児童を対象に、夏休みに個別指導を実施していました。
そして、25m泳げるようになった子とハイタッチをしたのは今となってはよい思い出です。
しかし、最近は夏休みに個別指導をする学校が減ってきています。
着衣泳の実施
多くの学校で着衣泳(着衣水泳)を実施するようになりました。
服を着たままだと泳ぎにくいことを体験し、万が一、川や海に転落した場合の対処方法を学びます。
実践的なことを学べるので、年に1回と言わず何回か実施できるとよいと思います。
今後の学校プール
次は、今後学校プールがどうなっていくか、現在すでに始まっていることも含めて、予想や希望をまとめていきます。
水泳授業の民間委託


公立学校のプールが老朽化している問題は、全国的にあります。
老朽化したプールを改修するのは多額の費用がかかります。その割に実施するのは夏の一時期だけです。しかも、エアコンの設置やICT機器の導入など、他にも予算をかけたいものがあります。
そのため、地域よっては水泳の授業を民間に委託するようになっています。
私が勤めていた学校でも民間委託が始まり、民間のスイミングスクールの指導者が指導してくれるようになりました。
水泳の授業を民間に委託することのメリットとデメリットを挙げると、
将来的には、民間委託が増えていくのだろうと思います。
自治体にとってはプールの修繕費や維持管理費より、民間に委託した方が費用が安く済む可能性があります。
教員にとっては、多忙化解消につながります。
スイミングスクールにとっては、新たな顧客(子ども)獲得の機会になります。
水泳授業を実施しない
学習指導要領では、小学校1年生から中学校2年生まで水泳の授業は必修となっています。
しかし、以下のようなことも記されています。
第2の内容の「D水遊び」及び「D水泳運動」の指導については,適切な水泳場の確保が困
難な場合にはこれらを取り扱わないことができるが,これらの心得については,必ず取り上げ
ること。
(小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 体育編より 一部抜粋)
学校プールの修繕費がない、自治体のプールもない、民間のプールもないという学校は、いずれ水泳授業は行われなくなると思います。(というか、実施したくてもできない)。
最後に
学校プールでの水泳授業は様々な課題があります。
しかし、小学生の子どもたちは水泳の授業を楽しみにしている子がたくさんいます。一方で、水泳の授業を嫌がる思春期の高学年児童や中学生もいます。
また、授業時間だけでは泳げるようにならず、結局スイミングスクールに通える子たちだけが活躍している面もあります。つまり、水泳指導が難しいということです。
子どもたちにとって、学校にとって、行政にとってどのような形がよいのか、全国でうまくいっているモデルを参考に、どの学校も良い方向へいくとうれしいです。








