公立学校の教員のメリットといえば、公務員ならではの安定した収入と福利厚生でしょう。
この安定感が足枷となって、教員を辞めたいのに辞められない先生はいませんか?
別にやめることを推奨しているわけではないですよ。
この記事は、正規教員と常勤講師を比較し、それぞれのメリットとデメリットを明らかにしていきます。
令和2年度より、会計年度任用職員制度が実施されました。これにより、常勤講師の待遇が変わりました。
ただ、詳細は自治体によって異なるので、参考として見ていただければ幸いです。
常勤講師として働くメリットが増えた気がします。
この記事をおススメする方は、
・現在正規教員だけど、退職して常勤講師として働くことに興味がある人
です。大学新卒の人や教員採用試験合格を目指している人には、参考にならない部分があります。ご了承ください。
ちなみに、私、ぴーちょこは、正規教員を退職した後、常勤講師を経験しています。実体験を交えながら、まとめていきたいと思います。
なお、記事の中で「臨時的任用」とか「任期付任用」という言葉出てきますが、どちらも常勤講師と同義で扱っています。
会計年度任用職員制度による、常勤講師の待遇の変化
まずは下の表を見てください。愛知県の資料から、一部修正を加えながらまとめたものです。
臨時的任用 任期付任用 (ともにフルタイム) | 非常勤講師 (パートタイム | |
---|---|---|
身分 | 一般職 | 一般職 |
年齢制限 | 無 | 無 |
営利企業従事等制限 | 有 | 無 |
政治的行為の制限 | 有 | 有 |
勤務時間 | 38H45M | 実績 |
休暇 | 正規に準ずる | 年間所定勤務日数による |
給与・報酬 | 正規に準ずる (上限有り) | 勤務実績に基づき 時間単価で支給 |
期末勤勉手当 | 正規に準ずる | 6月以上の任用期間で 週当たり平均15H30M以上で支給 |
退職手当 | 有 (6月以上の勤務) | 無 |
雇用保険 | 非加入 | 一定条件で加入 |
健康保険 | 公立学校共済 | 社会保険又は 国民健康保険 |
公務災害 | 地公災適用 | 労災適用 |
互助会 | 加入 (共済に準じる) | 非加入 |
隣に非常勤講師の勤務条件も載せました。比較すると、臨時的任用・任期付任用、つまり常勤講師と非常勤講師は、待遇がずいぶん違うことに気が付いたかと思います。
常勤講師は、「臨時的任用・任期付任用」の欄をご覧ください。正規に準ずるという記載がたくさんありますね。
給与・報酬の欄にある(上限有り)というのが個人的には気になるなあ。上限を無くせばいいのに。
常勤講師のメリット(正規教員を退職して常勤講師)
それでは、常勤講師のメリットを見ていきましょう
待遇が正規教員と同じ
給料は、正規のころの経験を加味して設定される
正規教員を退職し、再び常勤講師として働いた場合、給料が大幅に減っているのではないかと心配になるかと思います。
でも、自治体によって多少は異なると思いますが、常勤講師は年齢や経験年数を加味して基本給が決められます。
私の場合、多少は手取り額が少なくなりましたが、大きく減ることはありませんでした。
自治体によっては、給料に上限があるので注意が必要です。
私は正規として20年程働いたのですが、講師の給料の上限に達していました。
空白の1日がなくなる → ボーナス増!
会計年度任用職員制度が実施されるまで、常勤講師には「空白の1日」というものがありました。
何かというと、4月1日~3月30日までが契約期間で、3月31日は無職になるのです。
そのため、3月31日の1日だけ国民健康保険に変更する必要がありました。
ホント、常勤講師イジメとしか思えない待遇でした…。
何より問題なのは、ボーナスに影響することです。
ボーナスは6月と12月に支給されますが、6月のボーナスに影響が出ていました。
正規教員の場合、期末手当として、前年度の1月から当年度の6月までの半年間をカウントします。
しかし、以前の常勤講師は3月30日で契約が切れることから、翌年度に同じ学校で勤務することになっても、再契約という形なので、期末手当は4月~6月の3か月分しかカウントされません。
常勤講師として10年近く同じ学校に勤務していた先生、かわいそうでした…。
でも、令和2年4月1日からは、3月31日までの勤務となったので、そのまま継続して働く場合は、正規教員と同じ条件でボーナス(期末手当)が支給されることになりました。
同時に、年次休暇(年休)も繰り越しが可能となり、年休が消滅しちゃうから使い切らなきゃ!でも使う暇がない…という問題がなくなりました。
公立学校共済組合に加入
これまでの常勤講師は、従来の健康保険及び厚生年金保険に加入していました。
しかし、令和2年度からは正規に準ずるということで、公立学校共済組合に加入することになります。
これにより、保険制度が共済組合になるので、健康保険証も正規教員と同じものになります。
すでにできている教員ネットワークで、再就職しやすい
大卒者の場合、自治体や教育委員会に講師登録をしなければなりません。
しかし、正規教員として働いていた場合、すでに教員ネットワークで名前が知られているので、再就職をしやすいというメリットがあります。
極端な例になるかもしれませんが、私の場合をご紹介します。
私は、20年程、正規教員として働いていました。
そのため、校長先生や教頭先生といった管理職とのつながりがあり、講師登録をすることなく、直接依頼される形で常勤講師(臨時的任用講師)として働くことになりました。
産休に入る代替教員として依頼を受けたのですが、どうしようか迷っている段階でも別に2件依頼を受けました。
自慢させてください!あちこちの学校から引っ張りだこです!
正規の教員としてまじめに働いてきた先生であれば、教員ネットワークの中で悪い評判はないはずです。
自治体によってまちまちだと思いますが、常勤講師が足りないところが多いのではないでしょうか。
最近は、病気休職になる先生も多いです。名前を知られていれば、即戦力として期待され、すぐに連絡が入ると思います。
他業種で転職先を考えるよりは、圧倒的に楽に就職先が見つかります。(正規教員の経験が長ければ長いほど)
仕事内容がわかっている
仕事内容がわかっているのも大きなメリットです。だって、これまでずっとやってきた仕事ですから。
ですから、即戦力として働くことができます。学校側も期待してくれます。
また、新しいことを覚えなければならないというストレスがありません。
大きな仕事は確実に減る
会計年度任用職員制度により、常勤講師は正規教員と同一条件になります。
そのため、労働内容も正規教員と同じことを要求されても文句は言えません。でも、大きな仕事は正規教員よりも確実に減るはずです。
もちろん、小学校であれば担任、何かしらの校務分掌のトップくらいは回ってくるでしょう。
でも、研究主任になる、学校代表として研究発表をするといった、大きな仕事が回ってくることはないでしょう。
変な校長だと押し付けてくるかもしれないけど…。
常勤講師のデメリット(正規教員を退職して常勤講師)
次は、常勤講師のデメリットです。最初に書いた通り、この記事は正規教員を辞めて常勤講師として働くことに視点を置いていますので、それについてのデメリットが多くなります。
周りの先生たちの目
正規教員を辞める理由にもよるかもしれませんが、周りには、「どうして正規教員を辞めて、また同じような仕事をしているの?だったら辞めなきゃよかったじゃん。」と思う人が少なからずいます。
教員を辞めて常勤講師になったばかりの頃は、いろいろと聞かれて煩わしく感じるかもしれません。
私の場合、「過労で追い詰められて辞めた」と思われていた節があり、気を遣ってか、周りの先生は聞いてきませんでした。でも、気を遣って聞いてこないのだなということが伝わってきて、決して気分のよいものではありませんでした。
出世していく同年代
正規教員時代、同年代だった先生たちは、年齢とともにどんどん出世していくでしょう。
常勤講師としてこれからずっと働いていこうと考えている人は、そのことを理解しなくてはいけません。
年齢とともに、同年代の仲間だった先生たちは教頭、校長となっていくでしょう。将来的には、その人たちのもとで働くことになる日が来ます。
プライドが高い人は、そのことに耐えられないかもしれません。
気にしない人ならデメリットにはならないけど。
最初から講師だったならまた違いますが、正規教員として働いて人は、そのまま辞めずに働いていれば、自分も出世していった可能性があります。
同僚の出世が気になる人は、正規教員を辞めたことを後悔するかもしれません。
正規教員ではないという後ろめたさ
せっかく採用試験を合格して正規教員になれたのに、辞めてしまったことで後ろめたさを感じることになるかもしれません。
特に結婚している人であれば、相手親に対して後ろめたさを感じるかもしれません。
「公務員を辞めてしまう」というのは、世間一般ではものすごくマイナスな印象を与える出来事だと考えておきましょう。
教員事情を知らない人は、同じ仕事をしているのに、正規教員の身分を放棄したなんてもったいない!と思うことでしょう。
正規と変わらない仕事量と責任
これまでもずっと、常勤講師は正規と大きく変わらない仕事量と責任がありました。
これは、会計年度任用職員制度が実施されても変わりません。
むしろ、正規教員と同一であることが明文化されたので、堂々と同じ仕事量を求められることになるかもしれません。
まあ、これまで正規と同じ仕事を求められていたのに待遇だけ悪かったから、待遇が良くなった分、いいのかもね。
契約社員と同じで、継続的な雇用が保証されていない
常勤講師も公務員に準ずるため、常勤講師でいる間は給料も身分も安定しています。しかし、契約社員であることに変わりはありません。
基本的に年度更新なので、毎年同じように働けるかどうかはわかりません。
講師が足りていないような地域であれば引く手あまたでしょうが、講師が足りている地域では仕事が見つかりにくいかもしれません。
間隔があいてもよいのなら仕事が見つかるでしょうが、途切れることなく常勤講師として働けるか保証はありません。
自治体によっては、給料に上限がある
これは納得できないことなのですが、自治体によっては、常勤講師の給料に上限があります。つまり、どこかで頭打ちになってしまうということです。
基本的に正規と同じ労働条件であれば、給料も上限を設けてはいけないと思うのですが…。これは自分が働く予定の自治体を調べてみてください。
まとめ
これまで、常勤講師のメリットとデメリットをまとめてきました。
まず、常勤講師の立場が正規教員と同等となったことは、単純に考えればよい話です。これにより、給与面や福利厚生面で不利だった点が改善されました。
一方で、正規教員を辞めて常勤講師をやるということは、周りから見れば「辞めた意味がないじゃん」と言われることにもなります。
ただ、私個人としては、教員の仕事が嫌でなければ、常勤講師として働くのは十分によい選択肢だと思います。
もしすでに正規教員を退職してしまった先生で、別の転職先を探しているのなら、一度常勤講師として現場に戻ることも考えてみてはいかがでしょう。
精神的にダメージを受けて退職した場合、時間がたてば、もう一度学校で働きたくなるかもしれません。
教員免許更新制も廃止の方向で動いているしね。
もし、正規で働いていた地区には知り合いが多いので嫌だというなら、近隣の別の地域で常勤講師として働いてみてはいかがでしょうか。
でも、築いてきた教員ネットワークから外れちゃうのが欠点です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。