私が教員になったばかりの頃、たくさんのことを先輩の先生方に教えていただきました。その中で、「危機管理意識」についてもたくさんのことを学びました。
私が最初に勤務した学校は小学校だったのですが、児童が問題行動を起こしやすい学校でした。家庭的にも難しい問題を抱えた児童がおり、教育困難校とまではいきませんが、気を抜くとすぐに問題が起こったり苦情の連絡が入ったりしました。
危機管理意識をもつことはものすごく大切なことで、教員の気のゆるみから大きな問題や信用失墜につながってしまうことがあります。
「防げたはずだ!」と後から言われては、どうしようもありません。ですから、教員も危機管理意識をしっかりもつことが大切です。
教育困難校(特に中学校)で勤務にしたことがある先生なら、当たり前のことばかりかもしれません。
この記事は、
- 教師になったばかりの人
- 児童生徒が問題を起こす教育困難校に勤務する人(その予定の人)
におススメします。私の経験から、危機管理意識のもち方について、具体的な例を挙げていきます。
危機管理意識をもった具体的な対応
では早速、具体的な対応について紹介していきます。こんなことにまで気を遣うの?という例もありますが、事実ですのでそういった学校もあったと思ってください。
登校前、教室で子どもたちが来るのを待つ(子どもたちだけにしない)
そんなの当たり前にやっているという先生もいれば、朝からそんなにピリピリしなくてもいいじゃないと思われる先生もいるかもしれません。
でも、学校によっては、子どもたちが教室に入る前に教師がいないと問題が起こる場合があります。
私が勤務した学校で実際に起こったのは、特定の子に対するいじめです。具体的には、いじめられる子が登校する前に、机に落書きをしていたというものです。
道徳教育がなっていないとか、学級経営がうまくできていないのでは?という問題ではなく、問題が起こりやすい学校は起こるのです。
理想論じゃなくて、とにかく目の前で事件が起こらないようにすることから始めなきゃいけない!ということは、指導が難しい学校に勤務したことがある先生ならわかるはず。
理科準備実は鍵をかける
理科室と理科準備室は、中でつながっていることがほとんどだと思います。でも、理科室と理科準備室の入り口は別々になっていませんか?
理科の授業をしているとき、理科準備室に廊下から入ることができる作りになっているなら、必ず理科準備室に鍵をかけておかなければなりません。
理科準備室は、劇薬が置いてあります。もちろん、劇薬自体はきちんと鍵のかかったロッカーに保管してあると思いますが、マッチやライターなどは棚や引き出しに入れてあるだけだと思います。
授業中に理科備品が盗難にあったなんてことがあったら、管理責任を問われます。理科準備室への移動は、理科室から中を通っていくようにします。間違っても、理科準備室の入り口を開けっぱなしにしないようにしなければなりません。
マッチは箱に入れて1本だけ
これも理科の授業です。今の時代、理科で火を扱う時、マッチを使うことは少なくなりました。過去の話として参考にしてください。
私が教員1年目の時、当時の学年主任の先生に聞いた話なのでよく覚えています。
理科で使うマッチだけど、グループ分マッチ箱を用意したら、中に入れるのは1本だけにしてね。もし火をつけるに折れたと言ってきた場合、必ず折れたマッチと新しいマッチを交換するようにしてね。
どうしてかというと、過去にマッチ箱からマッチを何本か持っていく子がいたからだよ。もし火遊びに使ってボヤが起きた時、「学校にあったマッチ」なんて子どもが言ったら、学校の責任を問われるよね。
マッチに限らず、理科の薬品に関しても同じですよね。
集めた落ち葉は、その日のうちに片付ける
平和な学校に勤めていたら、まず考えないかと思いますが、落ち葉を集めたら、その日のうちに片付ける必要があります。
具体的には、集めた落ち葉をゴミ袋に入れたら、ゴミとして出す日まで倉庫に保管しておきます。
落ち葉を集めて山にしておいたら、火をつけられる可能性があるからです。これは、学校に通う小学生が火をつけるのでなく、中学生が忍び込んで火をつける可能性が高いのですが、そうした被害にあわないようにしておくことが大切なのです。
漢字テストの前に、机の上をチェック
漢字テストの前に、児童机の上を確認していますか?確認しておかないと、机の上に答えとなる漢字が書いてある場合があります。
テスト後に見つけても、「ちょっと確認のために、テスト中に書いちゃっただけ」とか言い訳をされたら、どうしようもありません。
全員の机の上をテスト前にチェックするのは大変なので、「隣同士、机の上に何か書いていないか確認し合いましょう」と指示を出します。
年度初めに数回行えば、答えを机の上に書く子はいなくなるはずです。
教室の教員卓にテストを置いておかない
テストを行ったら、教室の教員卓に置きっぱなしにしないように、すぐに職員室へ持っていくようにしましょう。
テストを教室に置いておくと
- 子どもが誰かのテストを見るかもしれない。
- 教師の目を盗んで、書き直す子がいるかもしれない。
- 誰かのテストにイタズラをする子がいるかもしれない。
小学校には、テストの扱いが雑な先生がいます。中学校では考えられないことですが…。
カッターナイフは回収しておく
図画工作の時間にカッターナイフを使うときは、必ず回収して教師が保管しておきます。
これは、2004年に佐世保で起こった小学校6年生の殺傷事件の影響が大きいです。この事件の直後、カッターナイフを道具箱に保管させないことになりました。
また、カッターナイフを学校で購入し、使用する場合に教師が用意するという学校もありました。これは、カッターナイフの私物を持ち込ませないためです。
ともかく、刃物の管理をきちんとしなければならないということです。
授業中のトイレは一人ずつ行かせる
授業中、トイレに行きたいという申し出があった場合、一人ずつ行かせるのが原則です。
ただし、これはケースバイケースで、低学年の場合は生理現象としてとらえ、同時にトイレへ行かせても問題ないでしょう。
しかし、高学年の場合、授業中に同時にトイレに行くとなったら、何か良からぬことを考えているのでは?と勘繰るのが教師です。
疑いたくはないけど、そういう学校もあります。
余談ですが、私は自分の学級の女児数人が、トイレで喫煙をしたということを経験しました。休み時間の出来事で、授業中ではありませんでした。
常習性がある喫煙ではなく、興味本位で集まって喫煙をしたということですが、こういうこともあるのです。女性の先生と協力して、時々見回ることも必要なのかなあと考えさせられました。
休み時間、教室を子どもたちだけにしない
休み時間は子どもたちにとって大切な時間です。天気がよければ外へ遊びに行く子が多いでしょう。
本来であれば、子どもたちに自由に過ごさせればよいと思います。
しかし、学校や学級の雰囲気が良くない場合は、休み時間に教室を空けない方が無難です。理由は、登校前に教師が教室にいるのと同じです。
人の物をすぐ触ったり盗んだりする子がいる場合はなおさらです。
教室には、子どもたちの私物がたくさんあります。持ち物がなくなった、イタズラされたということが起きないように、言葉は悪いですが、見張る必要があるなら、休み時間に教室を子どもたちだけにしてはいけません。
同時に、教室で孤立している子がいないか、輪に入れない子がいないかを見ることも大切です。
集金を受け取る場合は、朝一に手渡しで
今時、現金を扱うことは少なくなりましたが、それでも皆無ではありません。
何かを購入して、現金を学校に持たせる場合があるでしょう。その場合、必ず「朝一に手渡し」という約束を守らせましょう。
最悪なのは、子どもたちの登校時に担任が教室におらず、お金の入った袋が教師の机の上に積んでいかれるというパターンです。
これじゃあ、盗んでくださいと言っているようなもの。
私が小学生の頃、実際に集金が盗まれるという事件が起きました。たった一人分ですが、集金がなくなったのです。
出した本人は「出した」と言います。担任の先生は、私たちに「知らないか?」と聞いてきましたが、盗まれたかどうかや犯人捜しなどは行われませんでした。その後、どうなったかは知りません。
これは、明らかに教師に落ち度があったと言えますよね。ちなみに、私たちの間では「〇〇が盗んだらしい」という噂が駆け巡りました。
放課後に忘れ物を取りに来たときは、付き添う
放課後、子どもが忘れ物を取りに来たときは、必ず教室まで付き添うようにしましょう。
理由は、これまでの教室を子どもたちだけにしないと同じです。私物がたくさんある上、周りには誰もいません。
忘れ物を取りに来た子を疑うわけではありませんが、何かあってからでは困ります。
見回りは非常階段も
夏休み。その日の当番の先生は見回りをすると思いますが、非常階段の上までしっかり見回りをしましょう。
これも、平和な学校だと特に気にしなくてもよいですが、学校によっては見回る必要があるのです。
私が勤務していた学校では、朝になると運動場に花火のゴミが落ちていることは当たり前。非常階段にはタバコが落ちていることもしょっちゅうありました。
時には避妊具まで落ちていたこともあります。
後手の対応のようですが、学校の環境が整えられていないと、学校はますます荒れます。
危機管理意識のもち方
いくつか例を挙げてきましたが、他にも気を付けなければならないことはたくさんあります。
ただ、パターンとしては読めてきたのではないでしょうか。
つまり、問題が起きないように未然に防ぐということです。
子どもたちを縛り付けるようで良くないと考える先生もいらっしゃると思います。しかし、指導が困難な学校に勤務している先生にとっては当たり前のことです。
問題が起きないように未然に防ごうと思っても、問題は起こります。そしてその時、「本当に防げなかったのか」とふり返った時、防げたかもしれないということは結構たくさんあります。
最近は、何でもかんでも学校の責任にしようとする保護者がいます。「学校の管理責任」という言葉もしばしば使われます。
子どもたちをのびのび育てることは大切です。しかし、そうした考えと同時に、現実的な危機管理意識を持ち合わせることも、教師にとっては非常に大切なのではないでしょうか。