「教員って、子どもが夏休みのときって休みなんでしょ?」
もう最近はそんなことを言われることは少なくなったと思います。教員の多忙化が報道されるのに合わせて、子どもが夏休みでも先生たちはいろいろと仕事があるということも知られてきたように思います。
しかし、いまだに教員は夏休みがあると一部で信じている人がいます。
それはいかん!ということで、夏休みだって教員は出勤しているよという事実を伝えていこうと思います。
教員を志している人にとっても、教員の夏休みはどう過ごしているのか参考になると思います。
教員の夏休みの仕事
まずはっきり言っておきますが、教員は夏休み中も出勤しています。仕事もしています。
では、いったいどんな仕事をしているのか、ご紹介していきます。もちろん、人によってはここに紹介する以外の仕事もしていることをご理解ください。
部活動
中学校の先生は、部活動の指導があります。
部活動の大変さが指摘されて、外部コーチが入ってくるようになったといっても、現状は現場の教員が仕切っていることがほとんどです。
運動部については、7月の上旬ごろから地方大会が始まります。勝ち上がっていくと、夏休み中にさらに大きな大会に進んでいきますので、当然練習時間も増えます。
部活指導が苦にならない先生ならよいですが、強豪チームを受け持つことになってしまうと、肉体的にも精神的にも大変です。
異動した先の学校で受け持った部活動が、前任の顧問の指導でメチャクチャ強いということがあります。子どもも保護者も大会で勝ち上がることを期待しているので大変です!
部活動の多忙化が取り上げられるようになって、全体的には練習日や練習時間が大きく減った学校が多いですが、それでも夏休みの部活動指導は、中学校の先生にとって大きな仕事の一つです。
ちょっと前までは、制限なく部活動が行われていたので、大会前だと週6・7で練習する部活も少なくありませんでした。自分が主顧問なら練習日を減らせばよいのですが、副顧問だと主顧問の意向に合わせなければならないのでツラいです…。
私が子どものころ、夏休みでも月~土は部活動。弁当をもって1日練習なんてことも当たり前でした。当時の先生、よく見てくれたなあ…。
教材研究(授業の準備)
子どもが学校に来ている間は、なかなか細かいところまで教材研究ができません。そのため、子どもがいない夏休みの時期を使って、9月以降の教材研究(授業の準備)をします。
具体的には、教材資料や学習プリント作り、授業展開の立案(学習指導案)、テスト作成などです。
以前、ヤフコメで「指導書っていう、教える手順の本があるから、授業準備なんてしなくていいんでしょ」という書き込みがありましたが、真っ向から否定します。
もちろん、指導書をベースに授業を組み立てます。しかし、教える子どもたち、クラスの雰囲気は微妙に違います。そうした、微妙な違いに合わせて、授業を考えるのです。
教員に限らず、人に合わせてやり方を微妙に変える仕事ってありますよね?
医者は、風邪症状の患者が来た時、症状や年齢、体力などから総合的に判断して、薬を処方します。
美容師は、その人の髪質や顔の形などを考慮して、微妙な変化をつけます。
人を相手にする仕事の人は、それくらいの配慮をしてこそのプロだと思います。
…愚痴っぽくなってしまいましたが、指導書をもとに、クラスの実態やこれまでの教員としての経験をすべて動員して、授業を考えていくのです。
9月以降の行事の準備
夏休み中に、9月以降の行事の準備をしておくことも大切な仕事です。
運動会が9月に開催される場合は、夏休みの間にいろいろと準備をします。
秋は「芸術の秋」ということで、作品展や学芸会、学習発表会などが開催される学校があります。そうした行事の計画や準備も夏休みに行います。
大きな行事の準備は、夏休みから始めないと大変なことになります。
早い先生は、年度当初から考えていますよね。
授業時間の確保という観点から、運動会や学習発表会などの練習に割く時間は減少傾向にあります。
しかし、短期間でもよい結果に結びつくように、教員は早い段階からしっかりと準備を始めています。
出張
夏は各種出張が入りやすいです。子どもたちが学校に来ないので、時間が確保しやすいからです。
ただし、出張の数については、受け持つ校務分掌によってかなり違います。人によっては、一つも出張が入らない先生もいますが、多くの先生は何かしら学校外への出張があります。
各種研究会、研修
教科に関する各種の研究会や研修も夏休みに行われます。
研究会や研修は、学校外で行われるものと校内で行われるものがあります。
校内で行われるものは、基本的に全教職員が参加します。
学校外で行われる研究会や研修は、自主的に希望して参加するものもあります。教員としての志が高い先生は、積極的に夏休み中に自己研鑽に努めています。
お金を払って積極的に研修会に参加する先生もいます。
心配な児童生徒への対応
夏休みは、多くの子どもたちにとって楽しみな期間です。しかし、中には夏休みを迎えることが心配になる児童生徒がいます。
具体的には、以下のような子どもたちです。
- 家庭内暴力、ネグレクトなどの虐待が疑われる子
- 経済的に困窮している子
- 不登校気味で、長期休業によって登校できなくなる恐れがある子
- 問題行動が多く、非行に走る可能性がある子
- 自殺願望のある子
夏休みに入り、学校の目から離れることで、一気に悪い方向へ行ってしまう可能性がある子たちです。こういう子どもたちは注意が必要なので、担任を中心として時々連絡をとるなどして対応します。
家庭にいさせることが心配な子については、学習補充などの理由を作って、学校に数時間でも登校させることもあります。
児童相談所と連絡を取り合う必要がある子もいます。
子どもがいるときと夏休みの働き方の違い
ここまでは、教員の夏休みの仕事についてまとめてきました。ここからは、子どもがいるときと、いないときの夏休みで働き方がどう違うのか、ということについて紹介していきます。
とりあえず伝えておきたいのは、「夏休みはストレスが少ない」ということです。どうしてかということは、以下をお読みいただければわかると思います。
夏休みは普段よりゆっくり仕事ができる
夏休みは子どもがいないので、普段よりゆっくり仕事ができます。
普段はチャイムが鳴るので、教員は分刻みの仕事をしています。しかし、夏休みはチャイムがないので、普段よりはゆっくりと、もっと言うと自分のペースで仕事ができます。
時間に追われることがないので、じっくりと集中して仕事に取り組むことができます。
夏休みはゆっくりと昼食をとることができる
小・中学校は基本的に給食があります。給食があるということは、給食指導もセットでついてくるということです。
つまり、ゆっくり食べている余裕がないということです。
しかし、夏休みは給食がないので、ゆっくりと昼食をとることができます。
コロナ禍になってしまったので、外食ではなく弁当を持参する教員が増えました。
しかし、コロナ前は教員同士で外食をすることが多々ありました。私も教員のころは職場仲間と食事に出かけ、いろいろと話をしたものです。
昼食をゆっくりとることができない仕事はいろいろあると思いますが、教員は、夏休みや冬休みなど子どもがいないときは、ゆっくりと食べることができます。
保護者対応が少ない
子どもたちが学校に来ないので、必然的に保護者との接点も少なくなります。ですから、保護者対応が少なくて済みます。
保護者対応をストレスに感じる教員は少なくないので、そういう点から夏休みはリラックスして過ごせる期間と言えます。
休みが取りやすい
夏休み期間中、教員は休みではありませんから、平日に休みをとろうと思ったら休暇をとる必要があります。
夏休みは子どもたちが休みなのですから、休みがとりやすいです。ですから、土日とかけて数日連休にすることもできます。
お盆時期に旅行へ行くと混雑するのですが、そうした時期をはずしてまとまった連休をとることができるのが教員のメリットの一つです。
まあ、逆に言うと、子どもたちが学校に来ている期間は休みを取りづらいということでもありますが…。
ほとんど仕事をしない問題教師がいるのも事実!
夏休みは普段よりはのんびりとした雰囲気の中、落ち着いて仕事ができます。子どもたちが登校してきている時にはできない仕事に取り組む先生もたくさんいます。
しかし、中にはほとんど仕事をしない問題教師もいます。
一部の先生のせいで、「教員は夏休みに楽をしている」と思われているところがあるように思います。
そもそも問題教師というのは、仕事ができない、または仕事やらない人たちなので、最初から仕事が少ないです。その上、意欲も乏しいので「あんた何してるの?」という働き方をしています。
私が見てきた教員では、以下のようなことをする先生がいました。
- 教室にこもって昼寝をしている。
- 教室にこもって本を読んでいる。
- パソコンでネットを見ている。
- お昼に外食に出かけるが、2時間くらい帰ってこない。
- 学校外に出る。(どこへ行ったかは不明。しばらくして戻ってくる。)
読書が教材研究や子どものためになるようなことであれば、堂々と職員室で読めばいいと思います。ネットで調べ物をするのもそうです。
教室にこもって出てこなくなるのは、何か仕事とは関係ないことをするからです。(掃除や修繕など環境整備をしたり、その他必要な仕事をしたりして、真面目に仕事をしている先生ももちろんいますよ。)
こういう勝手な教員が一部いることで、真面目に働いている大多数の教員までもがそう思われるのではないかと残念に思います。(教員の不祥事と同じ)
まとめ
長々と書いてきましたが、教員の夏休みについてまとめると以下の2点に集約されます。
① 夏休み期間中も教員は仕事をしています。
② でも、普段よりのんびりと仕事ができます。
簡単に言えば、「仕事はあるけど、普段より多忙ではない」ということです。
そのため、労働時間を柔軟に対応させ、夏休み期間中は労働時間を短くしようという考えもあります。
今後どうなっていくかはわかりません。でも一つ言えるのは、夏休み期間中が教員にとっての充電期間となっていることです。
9月以降の準備に集中的に取り組めることから、9月以降の仕事の負担が軽減されます。
のんびり仕事ができる、休みが取りやすいといった状況から、気分をリフレッシュさせることができます。
学習意欲の高い先生は、研究会や研修に参加するなど、自己研鑽に努める機会となります。
夏休みは教員にとって休みじゃない!でもすごく大切な期間であることを世の中の人に知ってもらえたらうれしいです。
そして、優秀な人材がたくさん教員界に来てくれるとうれしいなあと思っています。