以前、名古屋大学の内田良准教授の講演を聞く機会がありました。
内田准教授が提唱していることについては、いまさらこのブログで紹介するまでもないですが、この時の講演会で教員の「定額働かせ放題」の話がありました。
この記事は、長時間勤務に関する問題点を、教員の立場から感じたことをまとめていきます。
以下の人に読んでいただければと思います。
- 教員志望の人
- 教員の仕事に興味がある人
- 現在教員で、長時間労働について興味がある人
- 家族が教員で、長時間労働している姿を見て心配な人
教員が多忙であることについて、マスコミが取り上げてくれる機会が増え、教員がいかに大変であるか世の中に認知されるようになってきました。とてもありがたいことだと思います。
「定額働かせ放題」の話から、給特法についても知られるようになってきたと思います。
というか、現場の教員でも給特法について知らない先生って結構いるんですよ。
私もそうでした。給特法という言葉すら知りませんでした。
給特法とは、
「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という法律の通称で、簡単にまとめると以下の2点になります。
教員の働き方は特殊なので、残業代は出しませんよ。
そのかわり、給与月額の4%を「教職調整額」として毎月支給しますよ。
ということです。
では、何が問題かというと、そう、「4%」の部分です。4%じゃ少なすぎるでしょ!ということです。
そもそも1971年にできた給特法、4%の根拠は1966年の残業時間が月に8時間程度だったことからきているのです。
でも、8時間の10倍である月80時間(過労死ライン)の時間外勤務をしている教員が、2016年の調査では、小学校で3割、中学校で6割いるとの結果が出ました。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021100100922&g=soc
現在では、時間外勤務が月45時間以上の割合が減ってきているようですが、それでも残業が多いことには変わりがありません。
https://reseed.resemom.jp/article/2022/03/04/3450.html
前置きが長くなってしまいましたが、給特法による「定額働かせ放題」により、教員にどんな問題があるか、元教員の立場から経験に基づいたことをまとめていきます。
時間外勤務をしているという意識がない
最近になって、教員の長時間労働について世間が関心をもつようになり、勤務時間を意識する教員が増えてきたように思います。
しかし、私が若かりし頃(今から20年ほどまで)は、教員の時間外労働について何か言っている教員はほぼいなかったように思います。
子どもたちが下校してから、学年で行事の相談をしたり、テストの採点をしたりしていると、午後7時頃になっているというのはよくあることでした。
もちろん、早く学校を出る先生もいれば、さらに遅い先生もいるわけですが、多くの先生が午後7時ごろまで仕事をしている姿を新任のころから見ていると、時間外勤務をすることが当たり前に感じられるようになってしまいます。
というか、遅くまで働くことについて疑問をもたなくなります。
そもそも、勤務時間をはっきり言えない先生たちが多くいたように覚えています。知っているのは、朝の打ち合わせの時刻と午後の打ち合わせの時刻です。
休憩時間が定められていることなんて、私は10年以上知りませんでした(汗)。
とにかく、「帰るのはある程度やることをやってから」という働き方をみんながしていたので、時間外勤務をしているという意識が希薄でした。
早く帰る先生が、何となく「後ろめたさ」を感じる雰囲気
これは職場の雰囲気によるかもしれませんが、早く帰ろうとすると何となく後ろめたさを感じる職場があります。
最近は、早く帰ろうと声をかけられることが多いので、早く帰ることに後ろめたさを感じることは少なくなってきました。しかし、私が若いころはまだそんな雰囲気が結構ありました。
中には、「学年主任よりも先に帰るのか!」と今ではパワハラで訴えられるようなことを言われ、毎日遅くまで帰れないと嘆く先生がいました。
小さなお子さんがいる女の先生は、「幼稚園への迎えがあるから」「習い事があるから」と言って割と早く退勤していましたが、そういう理由がない先生は、何となく周りの様子を見ながらほどほどの時間で帰っていたように思います。定時で退勤する先生は皆無でした。
教員の仕事を減らさず、早く帰らせることで満足する勘違い管理職
以前と比べたら、教員の勤務時間について、一般の教員から管理職に疑問を投げかける先生が増えてきました。とてもいいことだと思います。
私が辞める年にも、管理職に勤務時間について一言いう先生がいました。
教員が多忙であることについて、校長や教頭がいろいろと言われる時代ですから、当然管理職である校長は、先生方にできれば早く帰宅してほしいと考えています。
ただし、校長といってもいろんな校長がいます。
きちんと自分の職場の教員を見ている校長であれば、
と言います。
しかし、わかっていない校長だと、
というように、時間を指定して早く帰らせようとします。
はっきり言って、こんな校長は迷惑です。早く帰れないから学校に残っているのに、仕事を減らさないで早く帰らせるということは、
仕事を先送りにさせること
と同じです。どうしてもその日にやらなければならない仕事だった場合、持ち帰って家でやるか、翌日に早く出勤することになります。
それなのに、「うちの学校の先生は、みんな早く帰るよ~。」と得意げに他の校長に話している校長を見ると、腹が立って仕方がありません。
まとめ
最後の方は管理職が出てきて、ちょっと話がそれてしまいましたが、教員にとって大切なことは、
長時間労働、つまり時間外勤務をすることが当たり前にならないこと
だと思います。
教員の仕事は、どうがんばっても勤務時間内に終わりません。特に、「子どもたちのために、よい授業をしたい!」という熱意のある先生は時間が足りません。しかし、長時間労働にならないようにすることは、今後も教員を確保するためには大切なことです。
そのためには、教員の仕事を減らすことが第一ですが、教員が何かできることはあまり多くありません。
集金業務、会計処理、備品管理など…教員がやらなくてもいい仕事っていっぱい…。無駄な会議や研修もなくせ!
仕事が減らないなら、仕事を効率的にやることが大切です。
しかし、私がまず思うのは、
早く帰ることが「よい」と思えるような雰囲気になること
だと考えています。遅くまで仕事をするのを「よし」とするのではなく、早く帰る人を「よし」とし、極力早く帰れる雰囲気を学校に作ることが大切です。
私の経験上、教員が退勤するのが遅い学校は、無駄な会議や無駄な研修などがいくつもあります。帰るのが遅い先生ばかりなので、何となく「多少やることが増えても大丈夫だろう」という雰囲気がありました。
その一方で、早く帰る先生が多かった学校は、会議や行事が精選されていただけでなく、必要のない会議や研修が追加されることはほとんどありませんでした。何かを増やそうとすると、先生方から不満の声があがるからです。
つまり、管理職ではない先生方が「早く帰るんだ!」という意識を共通してもつことは、多忙化解消には大切な要素の一つだと考えています。
「定額働かせ放題」にされないように、まずは教員の意識改革をしてみませんか。とりあえずできることは、早く帰れるときは定時に出ること。それが難しければ、早く帰る先生に便乗して帰ること。これならできそうですよね。
もちろん、仕事を先送りにして首がしまることがないよう、残りの仕事とそうだんしてくださいね。
教員の忙しさが減って、精神的な負担も減っていけば、私を含め辞めなくてもよかった人が全国にたくさんいると思います。
長時間労働が当たり前にならない学校が増えることを願っています。