教員は実に多忙です。なぜ多忙化といえば、やることが多岐にわたっているからです。仕事を投げ出したいところですが、そうもいきません。では、早く帰るためにはどうしたらよいのか。
それは、仕事の取り組み方を見直して、効率的に行うことです。
自分の周りに、仕事が早い人っていますよね。そういう人は、効率的に仕事をしていますよ。
今回は、「やらなければならない仕事をどう効率化するか」ということに焦点を当てます。一つ一つの仕事にかかる時間を減らしていけば、トータルでそれなりの時間短縮になります。「塵も積もれば山となる」です。
それでは、私の経験や私の周りにいた仕事の効率がよかった先生の工夫をご紹介します。すでにやっているよ、とか自分のやり方の方が効率的だよ、と思われる先生もいると思います。そういった先生でも参考になるよう、できるだけいろいろなアイデアを紹介していきます。
テストの採点
回収の仕方を工夫する
1クラスの人数が多い場合
1クラスの人数が多い場合は、番号順に回収するのがよいです。なぜなら、後で得点を記入するときに楽だからです。1クラスの人数が何人から多いのかと言われると、線引きは難しいですが、20~25人が一つのラインだと思います。
一人ずつ教師のところに持ってこさせると、それなりに時間がかかってしまいます。そこで、以下のような方法を取り入れると早く集められます。
① 役割を決めて集めさせる
1番の子が5番までを回収、6番の子が10番までを回収と役割を決めて集めさせる。こうすることで、40人学級でも8人の子が動くだけで済みます。
② 座席を番号順にする
中学校の定期考査では当たり前のことだと思いますが、小学校で座席を番号順にする先生は少ないかもしれません。座席を番号順にしておくと、後ろから順に集めるだけで番号順にそろいます。
③ 提出させる場所を分ける
①の方法の別バージョンです。教師のところに一人一人提出させるのですが、1~5番の提出場所、6~10番の提出場所、というように、まとまりごとに提出させます。40人学級であれば、提出先が8箇所になるので、同時に8人ずつ動きます。こうすることで、時間を短縮します。
1クラスの人数が少ない場合
1クラスの人数が20人を切るような少人数の場合は、番号順を意識せず、できるだけ早く回収できる方法で問題ありません。なぜなら、得点を記入するときにテストが番号順になっていなくても、記録するのにそれほど時間的なロスはないからです。
後ろから集める、教師が回収に行くなど、都合の良い方法で構いません。
問題ごとに採点
テストは、クリップで留めましょう。次から次へとめくるためです。ダブルクリップが使いやすいですね。
テストは一人ずつ採点するのではなく、問題ごとに採点するのがポイントです。一人の答案を全て採点してから次の答案を見るより、問題ごとに採点した方が、最終的にかかる時間は短くなるはずです。
記述式でない問題は、数問ずつ採点
〇×や記号で答える問題、簡単な単語で答えるような問題は、数問ずつ採点をします。2~3人採点すれば、解答を覚えてしまうので、解答用紙を見ることなく、どんどん採点することができます。
記述式は1問ずつ採点
記述式の問題は、一人一人微妙に違う表現になるので、評価基準がずれないように一気に見た方がよいです。できれば採点をする前に、一度その問題だけ全員分見るのがよいでしょう。
記述式の問題は、一問ずつ集中して採点した方が、採点基準がずれることなく、早く正確に採点ができます。
得点はデジタル化
成績を出すのに、ほとんどの先生がExcelなどの表計算を利用していると思います。得点はデジタル化して集計した方が、圧倒的に楽ですし、基準がはっきりした見やすいデータになります。
テストの採点が終わった後、得点をデジタル化するために、データ入力をしましょう。このとき、答案が番号順に並んでないとムダな時間がかかってしまうのです。
なお、紙の名簿に手書きで結果を書く先生も多いかと思います。
私、ぴーちょこもそのクセが抜けず、毎回記入していました。
でも、手書きで書いた結果を後でデータ化しませんか?データ入力した後、紙に書いた結果は使用しますか?
いらないですよね?(データが消えるのが怖いから紙にも保管するんだ!という先生もいますが。)
だったら、無駄な行程を一つ省いた方が、時間短縮になると思います。
宿題の回収とチェック
宿題の回収
基本は、「登校後にすぐ提出させる」ことです。全員がそろってから集めさせると、その分時間がかかってしまいます。全員がそろってから回収することで、だれが宿題を忘れたのか把握しやすいですが、忘れた子への指導が入るとさらに時間がかかります。
ですから、登校後に提出させるようにしましょう。その時の工夫を紹介します。
① 提出物ごとにカゴを用意する
種類ごとに分けて提出するのは当たり前です。そこにカゴを置いておくことで、積み上げた宿題がくずれることなく集めることができます。
カゴは提出物の札を貼っておくか、提出物の種類によって色分けしておくと、子どもたちが混乱しません。
② ページを開いて提出させる
教師がチェックしやすいように、ノートは開いて提出させます。閉じたまま提出させると、該当ページを開くというムダな時間が必要になってしまいます。
③ 宿題忘れはグループでチェックさせる
クラスの人数が多くなると、だれが宿題を忘れたか確認するのも大変です。名簿にチェックさせてもよいのですが、自分で〇をつけさせると、宿題を出したのに〇をつけ忘れる子がいて、かえってわかりにくくなった経験があります。
そこで、グループごとに少人数でチェックさせることにしました。ただし、宿題を忘れた場合は、グループでチェックした子が伝えるのではなく、必ず忘れた本人が教師に報告するというルールを決めました。
宿題のチェック
宿題は毎日見るものですから、パターン化して時間短縮に取り組みたいものです。もちろん、忘れてはいけないのは、ていねいにチェックすることです。宿題は保護者も見ています。ていねいに確認しながらも、時間短縮を目指しましょう。
① 評価はABCの記号やスタンプで
宿題をチェックした後の評価は、ABCを書いたりスタンプを押したりするのが便利です。
例えば、漢字ノートには、A・・・ていねいに書けた、B・・・もっとていねいに書こう、C・・・書き直し、というように意味づけをします。年度当初に説明しておけば、子どもたちはAをもらえるようにがんばります。Aが連続何回で、「S」をつけたこともあります。
スタンプもわかりやすくていいですね。これもABCと同じように、スタンプによって意味づけをしておけば、わざわざコメントを書く必要もないですし、説明もいりません。
② やり直しのルールを決めておく
宿題のチェックをして、子どもが間違えていることに気付いた場合、やり直しをさせますよね。やり直しもルールを決めておくことで、ムダな時間を省くことができます。
例えば、漢字の直しであれば、間違っている漢字にペンで「✓(チェック)」をします。年度当初に、「✓を付けられた漢字は間違いなので、確認してノートに5回ずつやり直しをすること」と説明しておきます。
こうしておけば、間違いを見つけた時に「✓」をつけるだけでよくなります。
③ 答え合わせを子どもにさせる
例えば算数の宿題の場合、低学年であれば担任が〇つけをしても、それほど時間はかかりません。しかし、中学年以上で筆算を学習するようになると、教師が答えを確認していては、膨大な時間がかかってしまいます。
だから、答え合わせは基本的に子どもにさせます。
算数のプリントを宿題にした場合は、翌日の朝、黒板に答えのプリントを掲示しておきます。それを見ながら答え合わせをさせるのです。
正しく答え合わせができる力は、学力を伸ばすためにとても大切な力であることを、常に子どもたちに伝えるようにしてきました。
もちろん、最後は教師による確認が必要です。しかし、慣れてくると、正しく答え合わせができる子、できない子を把握できるようになるので、特に注意が必要な子だけしっかりと確認すればよくなります。
学習プリントの準備
単元ごとにまとめて印刷しておく
授業に必要な学習プリントは、単元ごとにまとめて印刷しておきましょう。思いついた時に印刷しようとすると、その都度手間になります。
面倒なようで、単元ごとにまとめて印刷しておいた方が楽です。また、単元を見通すことになるので、行き当たりばったりにならなくなります。
学年で役割分担する
2学級以上の学年であれば、だれが何を印刷するか、役割分担をしましょう。それぞれが印刷していては、時間のムダになってしまいます。
国語を担当する人、算数を担当する人のように分担し、担当した人が全クラス分を印刷します。こうすることで、学習プリントが効率よく印刷できますし、学年間の風通しがよくなります。新任や経験年数が少ない先生と組む場合は、特に意識して取り組むとよいと思います。
長期休業中に印刷しておく
学習プリントの印刷は、思ったより時間がかかる作業です。そのため、長期休業中にできるだけ印刷しておくことをおススメします。
長期休業中なら、時間にも心にも余裕があるので、大量のプリントを印刷するのも苦になりません。また、長期休業明けの学習計画を立てることにもなるので、一石二鳥です。
プリントだけでなく、学習用具も学年で分担したり、長期休業中に準備しておいたりするといいですよ。
最後に
教師の仕事の中には、子どもたちのために手を抜いてはいけないものもあります。しかし、仕事の進め方については、取り組み方を見直すと、案外直した方がよいところが見つかるものです。
学級の人数が少人数の場合、テストの採点も宿題のチェックもすぐに終わります。しかし、単学級なので授業の準備はどの教科も自分で準備することになります。
複数クラスの学年であれば、授業の準備は分担して行うことができます。
学校によって環境はことなりますが、今いる職場で時間が短縮できるように、仕事の仕方を工夫していきましょう。
ちょっとした積み重ねでも、1年で見れば大きな違いになります。1日5分の短縮でも、200日あれば1000分、つまり16時間以上になります。
浮いた時間で、ゆっくりコーヒーを飲む、ちょっと早く帰って買い物に行くなど、プライベートの時間を多く確保できるようになるといいですね。最後までご覧いただき、ありがとうございました。