元教員のぴーちょこです。今回はちょっとびっくりし、そして考えさせられることになった体験について紹介します。
1年生の生活科の授業で、近くの公園へ出かけた時の話です。私は空き時間だったので、引率の補助として参加しました。まだ年度当初。話したことのない1年生ばかりだったので、仲良くなれたらいいなあとワクワクしながら出かけました。
無事に公園につき、自由時間になりました。子どもたちはよほど楽しみにしていたのでしょう。我先にと遊具に向かって走っていきます。私はそんな子どもたちを微笑ましく思いながら、子どもたちを追いかけていきました。
私は夢中で遊んでいる子どもたちを順に見て回り、声をかけていました。そんな中、数人の女の子たちのグループと話をしているとき、ある女の子の一言が私を凍り付かせました。
「ねえねえ、お金ちょうだいよ。」
???…。初めは意味がわかりませんでした。にこにこしながら聞いてきます。他の子と冗談で言い合っているのを、私に向かって言ってきたわけでもないようです。いきなり私のところへ来て言ったのです。
「お金を持ってきてないから、ないよ。」と言っても、「えー、お金ほしいよ。お金ちょうだい。」と言ってきます。「ないものはないよ。それより、みんなで遊んでおいで。」とその子に言いました。
「お金ちょうだいよ」と言ってきた子とは、この時に初めて話しました。初めて話す相手に向かって、1年生の子がいきなり「お金ちょうだいよ」と言うことに驚き、そして何とも言えない気分になりました。別に、「同情するなら金をくれ!」という、若手教員は知らないであろう有名なフレーズを思い出したからではありません。
私は、この子がこんなことを言ってきた理由を考えてみました。
〈理由①〉
私と話す直前まで、友達同士でほしいものやお小遣いなど、お金の話をしていたので、つい「お金ちょうだいよ」と言ってしまった。
〈理由②〉
「お金ちょうだいよ」と言うのが口癖になっている。「お金ちょうだいよ」と言えばすぐにもらえるような家庭環境なのかもしれない。
〈理由③〉
この子の家庭が経済的に苦しく、親がお金に困っていることを知っている。親が普段から、お金について話しているのを耳にしており、この子の頭の中に、「お金」のフレーズが刻み付けられている。
子どもの、しかも1年生が言うことなので冗談に決まっている!と思いたいのですが、1年生の子にいきなり「お金ちょうだいよ」と言われたインパクトは、今でも忘れられません。
私の気にしすぎかもしれませんが、1年生の子がいきなり「お金ちょうだいよ」と言うでしょうか。よくあることでしょうか。ほとんどの親がこんなことを言わないように、しつけてきているように思うのです。お金の話を人前でするんじゃないと。
わが子を見ていると、親の口調や口癖を知らず知らずのうちにまねしています。子どもは周りの影響を多大に受けるのです。だから、この子は「お金ちょうだいよ」というフレーズをよく耳にしているのかもしれません。
子どもの言うことから家庭環境を想像するのは、教師という職業病なのでしょう。アンテナを高くして、子どもや家庭環境の変化をキャッチしようとする反射的行動なのです…。
話は飛躍しますが、虐待だったり家庭環境の大きな変化だったり、子どもにとって大きな出来事があると、学校生活にも変化が表れます。この1年生の発言から、子どもの様子をよく観察することは大切なことだと改めて考えさせられました。