こんにちは、元公立小中学校教員のぴーちょこです。
小学校の先生で、自主学習を宿題に出す先生はいらっしゃいますよね? また、全校体制で自主学習を課題として出す小学校もあります。
今回は、自主学習について教員としての経験をもとに、自主学習を課題として出すときの注意点を述べたいと思います。なお、ここでは自主学習も自主勉強も同義として取り扱っています。
自主学習を宿題に出す教師の意図
自主学習を宿題に出す教師は、どんな意図があるのでしょうか。それは、自分で考え、自主的に学習に向かう習慣をつけてほしいという教師の思いがあると思います。
学年が上がるにつれて、学習内容が増えることはもちろん、学習内容の定着具合も個人によって差が出てきます。そこで自分に必要な学習を考え、計画し、学習に取り組めるようになってほしいと教師は願います。
小学校で2020年から、中学校で2021年から実施される、新しい学習指導要領の趣旨を踏まえると、自主学習に取り組ませることは、大きな意味があると思います。
教師は、これまでの人生経験から、自主的に学習することの大切さを知っています。というか、教師になった人は自主的に、計画的に学習に取り組んできた人たちですから、自主学習に取り組んでほしいという思いはもちますよね。
自主学習を宿題に出すことの問題点
ただし、自主学習を出すことはいろいろな問題点があります。ぴーちょこの経験やいろいろな教員仲間の話、過去の勤務校の実践などから私が考える問題点は、以下の通りです。
本来の意味での自主学習ではない
極論から言えば、自主学習を宿題として出すことは、本来の意味での自主学習ではないと思います。
なぜなら、教師から宿題として出すことで提出するという強制力をもたせているからです。つまり、自主的にやろうと思っていなくても、出さなければ先生に怒られるから取り組むということになってしまうからです。
自主学習を強制力のある宿題にせず、出しても出さなくてもよいと言ったら、子どもたちは自主学習を出すでしょうか?
私が若かりし頃、自主学習を出すことをよく考えていなかった頃の話です。宿題とは別に自主学習に取り組むことを子どもたちに勧めていました。自主学習ノートを作り、取り組んだら次の日に提出させるという方法です。しかし、1年間通して、自主学習を出し続けた子はたったの一人です。時々出す子が数人いただけで、5月か6月には多くの子が出さなくなりました。
これは、後述する「自主学習で何をしてよいかわからない子ども、保護者がいる」ということが大きな理由だと思います。
自主学習を出さない問題について話をしましたが、逆に、ただ自主学習を提出することが目的になるという問題もあります。これは、「自主学習に取り組むことで褒められるから」という理由で取り組む子がいるということです。
例えば、自主学習ノートに取り組み提出させる場合、教師が「〇〇さん、もう自主学習ノート3冊目が終了!みんなすごいね!」と、ノートの数を競わせるようなことをすると、子どもたちは「自主学習は中身よりも量」だと認識します。これが、自主的に学習に取り組むことと言えるのでしょうか。
自主勉強が習慣化している子にとっては、負担になる
宿題以外に、家庭で自主学習に取り組んでいる子はいます(親の教育力でしょうが)。また、塾に通って課題に取り組んでいる子もいます。
その子たちに対して、自主学習ノートを作って、それを出すように指示することは負担を増やすだけです。家で取り組んでいるワークやプリントなどを提出することを許可すればよいと思うかもしれませんが、家での学習の様子を周りの子に知られたくないという保護者もいます。
教育熱心な保護者にとっては、「わざわざ学校から出される自主学習に取り組む必要はない」と感じているかもしれません。
自主学習で何をしてよいかわからない子ども、保護者がいる
自主学習として何に取り組めばよいのか、きちんと伝えておかないと、子どもも保護者も何をしてよいのかわかりません。伝えなくてもきちんとやれる子は、そもそも家庭できちんと学習できる環境が整っている場合がほとんどです。
教師の意図に即して考えるなら、自主学習で何をしてよいかわからない子どもにこそ、きちんと自主学習への取り組み方を説明しなければなりません。
以前勤めていた学校では、自主学習への取り組みを学校全体で推進していました。自主学習に取り組ませるねらいとともに、「こんなことに取り組むとよいですよ」という内容も載せました。その内容の中に、「低学年は絵を描いてもよい」という項目がありました。
年度末の保護者アンケートに、「絵をかくとかで時間をつぶしており、毎日やることの意味がわからない。調べる事、考える事、とても重要な勉強ですが、それは毎日いりますか?先生方は子どもの頃、毎日をそんな風に過ごしていましたか?」という辛辣な意見がありました。
学校としては、「まず机に向かう習慣をつける、そのためには絵を描くということからスタートしてもよい」という考えだったのですが、当然保護者はそんな解釈をしません。
自主学習は一人一人取り組むことが違うのですから、担任が一人一人にあったアドバイスをしながら、保護者にも理解を求めなければならないと痛感しました。
自主学習を宿題として出すだけでは絶対にうまくいきません。 私も一人の保護者の立場から言わせてもらえば、自主学習を宿題に出されるくらいなら、「ここの学習内容がまだ不十分なので、そこを個別に宿題として出しました」と言われるほうがありがたいです。
マンネリ化
よくも悪くも、自主学習を毎日宿題に出していると、取り組み方がマンネリ化してきます。
例えば、よい場合として、毎日宿題だけでなく、自主学習も漢字の練習に取り組んだことで、これまで苦手だった漢字テストでいつも高得点をとることができるようになった。
悪い場合の例として、社会科の教科書を見て、大切だと思うところをノートにまとめるという自主学習を続けていたが、本当に大切かどうか考えないまま、ページ順にまとめるだけの作業になってしまった。
どんなことでも、繰り返し取り組んでいると、マンネリ化してきます。それが意味のある繰り返しになればよいのですが、そうでない場合もたくさんあります。
自主学習を宿題にするなら配慮すべきこと
自主学習の問題点を挙げてきましたが、自主学習に主体的に取り組めるようになったら、学習習慣が身についたも同然です。それこそが、教師のねらいとするところです。だから、自主学習に取り組ませるメリットも大きいのです。
しかし、ただ「自主学習に取り組みなさい」では、うまくいくはずがありません。そのために、取り組ませる時に配慮しなければならないことがあります。
結局、問題点の裏返しになってきますが、まとめると以下のようになります。
自主学習を行う意図を保護者にきちんと理解してもらうこと
私が勤務していた学校では、全校体制で自主学習に取り組ませていました。しかし、学校側の思いをなかなか理解してもらえませんでした。保護者アンケートに書かれていたことを紹介します。
自主学習も大事だと思いますが、もう少し宿題を出してもらえると、子どもたちも勉強する時間が増えると思います。
自主的にやるはずの自主勉がすでにやらされていて、自主勉の内容が薄い気がします。意欲的にできると身になると思いますが、そんな目標が立ててやれるといいです。
自主勉の取り組み方の真意がわからないまま1年が過ぎました。何のためにやらせていたのでしょうか。自主勉自体もクラスによって先生からの評価が違うので、我が子にとってはあまり力にならなかったように思います。よくないものはよくないと指導していただきたかったです。
自主学習には、子どもの主体性も大切ですが、保護者の協力も必要です。特に低学年の児童ほど、保護者の協力がないと自主学習にうまく取り組めません。そのために、自主学習に取り組ませる意図を保護者によく理解してもらうことが大切です。
しっかり保護者に伝えるためには、
- 年度当初の学級懇談会で説明する
- 定期的に、自主学習についての通信を発行する
- 自主学習への取り組みに助言をする(ノートにコメントを書く)
のような取り組みが大切です。自主学習について、根気よく保護者に伝えていくことが求められます。
自主学習の方針もしっかり伝えましょう。基礎学力をさらに伸ばさせたいのか、調べ学習のような教科書外の学習を期待するのか、担任としての思いを年度最初に伝えるとよいです。
自主学習の内容(ネタ)を例示してあげること
自主学習の内容について、保護者にどう伝えますか?自主学習なので基本的に自由だと思いますが、「何に取り組んでもかまいません。」では無責任です。教育熱心な保護者もいれば、無関心な保護者もいます。漢字や計算などの基礎学力を伸ばしてほしいという保護者もいれば、自分で何か調べる学習をしてほしいと思う保護者もいるでしょう。
そのためには、自主学習の内容(ネタ)を例示してあげることが大切です。保護者からしてみれば、学校から例示された内容があればとても助かります。なぜなら、子どもが「何をしていいかわからない」と言ってきても、「これをやればいいじゃない」と言えるからです。保護者が悩む必要がありません。
では、具体的にどんな内容を例示すればよいのでしょうか。学年によって違ってきますが、いくつか示しますので参考にしてください。
勉強が苦手な子から得意な子まで、どの子にも対応できる幅広い内容を示しておくとよいですよ。
国語
- 漢字ドリルを見て、漢字練習をする
- 言葉の意味を国語辞典で調べる
- ことわざ、慣用句の意味を調べる
- 決まった言葉を使って短文づくりをする
- 日記など、文章を書く
算数
- 計算ドリルを使って、計算練習をする
- 教科書の問題に取り組む
- 作図やグラフの作成の練習をする
- 文章問題を自作して、自分で解く
社会
- 地図記号を調べて書く
- 日本地図や世界地図を書く
- 好きな歴史人物の詳細を調べる
- 歴史人物の漢字練習をする
理科
- 植物や動物について、図鑑で調べてまとめる
- 実験したことをまとめる
- 教科書にのっていることをノートにまとめる
英語
- イラストと英単語をセットで書く
- 学習した英語表現を使って、短文をつくる
その他
- 作曲家の著名な曲を調べる
- 音楽記号をかいてまとめる
- 鉄棒や縄跳びの技を調べ、イラスト付きでまとめる
- 料理の下ごしらえや、食材の保存方法などを調べる
教師が一人一人に具体的なサポートをすること
保護者に説明し、内容を示したからといって、それで終わってはいけません。当然、子どもたち一人一人へのサポートが必要になります。
ノートに取り組ませるなら、短くてもよいので必ず一言コメントを書いてあげましょう。また次もがんばろうと思えるような温かい言葉がけが大切ですね。
自主学習への取り組み方に指導が必要だと思ったら、具体的にどうしたらよいか個別に教えましょう。取り組む内容にマンネリ化が生じているようであれば、その子の学習成績から取り組むとよい学習をすすめてあげるとよいですね。
まとめ
宿題にプラスして取り組ませる自主学習。教師の思いとは裏腹に、自主学習の効果があったと感じられる子はあまり多くありません。私、ぴーちょこの場合はそうでした。でも、やり手の先生なら違うのかもしれませんね(笑)。
でも一部の子であっても、「自主学習をがんばってよかった!」と言ってくれる子がいれば、うれしいですよね。
保護者の協力を得ながら、学習に主体的に取り組める子をたくさん育てていきたいですね。