いつの時代も、「今の若者は…」というフレーズが聞かれます。それは教員界についても同じです。
さて、今回は、今の若手教員って、昔の若手とどう違うのかということについて、元教員の個人的な意見ですが、感じたことをまとめていきたいと思います。
ただし、若手を比較すると言っても、いつの頃の若手なのか指定しておかないといけません。下のグラフを見てください。
今回は、「昔の若手」、「今の若手」を以下のように定義します。
昔の若手…今から20年くらい前。競争率が最も高かったH12前後に採用された若手。
今の若手…平成末期から令和初期。競争率が下がり続けている近年の若手。
競争率(採用倍率)が全然違うことが、今回の記事の核になります。
それでは、昔の若手と今の若手との違いについて、まとめていきます。
採用1年目の環境が大きく違う
私、管理人のぴーちょこが採用されたのは、今から20年程前ですから「昔の若手」になります。私自身が採用された頃と比べて、今の若手は大きく環境が違います。
採用された自治体によって、多少は違うかもしれませんが、全国的な傾向は大きく変わらないと思います。
職員室の年齢層が違う
昔の若手が採用された頃は、そもそも採用人数が少なく、団塊の世代がたくさん働いている時代でした。
私が採用されて初めて出勤した時、「何年かぶりの新任だ」と言われたのを覚えています。職員は全部で30人程度の学校だったのですが、私の上は、20代後半の先生が一人、その上になると30代後半が2人、後は40代以上という状況でした。
一方、今の若手が採用される最近の職員室は、20代や30代の教員の割合が昔より多いです。
学校の規模が小さくなければ、毎年、新規採用者が来ることは珍しくありません。2人以上同時に新規採用者を受け入れることもあります。
さて、この職員室の年齢層が違うことを、今の若手目線からメリットとデメリットを挙げるなら、以下のようになります。
私が若手の頃は、右を見ても左を見てもベテランばかりだったので、いろんな先生から教えてもらうことができました。しかも、若手自体が少なかったので、質問する前からいろいろと教えてもらえることが多々ありました。
世話を焼いてもらっている感じです。温かい先生がたくさんいました。
その一方で、年の近い人がおらず、仕事の辛さを話しにくい状況でした。
そう思うと、今の職員室は若手の先生が昔より多いので、年の近い先輩に話を聞いてもらうことができます。当時を思い出すと、今の若手の先生がうらやましいなあと感じます。
大きな役割が回ってくるまでの期間が違う
昔はベテランの先生が多かったので、大きな仕事が回ってくるまでの期間が違いました。
20代で学年主任をやることは、極めてまれでした。というか、私は聞いたことがありません。私が学年主任を任されたのは、30代半ばになってからです。
それが、今の時代は、小学校で20代の学年主任がいることは珍しくないようです。単純に、若手の人数が多いから20代で学年主任になる場合もあれば、ベテランの先生が補佐する形で20代に学年主任を任せるという場合もありました。
とにかく、今の若手は、若い頃から大きな役割が回ってくる可能性があります。それは単純に、昔と比べて職員室の年代層が若返っているからです。
まだ経験が浅いのに大きな仕事を任されることを負担に感じるか、逆にチャンスだと感じるかは人によりますね。
ICT機器の環境が違う
ICT機器の環境は大きく違います。これはもう、びっくりするくらいに違います。
私が採用された20年ほど前のICT機器の状況を紹介します。今との違いは明らかです。
- 個人用のPCはない。職員室にデスクトップPCが3台あり、交代で使う。
- 個人でノートPCを持ち込んでOK。でも、プリンターにつなげないので、データを出してデスクトップPCから印刷する。
- 体感で、教員の8割以上が一太郎を使う。
- 16mm映写機やスライド映写機、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)がまだ現役だった。
- 記録媒体のメインはFDD(フロッピーディスク)。容量が多いものはMOディスク。
- 学校用のデジカメは驚くほど低性能だったので、個人持ちが当たり前。
教員界はICTがメチャクチャ遅れているので、20年前の企業はこんな状況ではないと思いますが…。
職員室にデスクトップPC3台で足りるの?と思われるかもしれませんが、当時はこれで普通に回っていたのです。
印刷したいときは、データをFDDに入れて、デスクトップPCから印刷します。誰かがデスクトップPCを使っている時は、「終わったら教えてください」と声をかけておく。これで回っていたのです。
思い出せば、今のようにPCに触っている時間が少なかったと思います。
今回の記事とは関係ありませんが、ICT化が進んだことで、多忙になった一面もあると感じています。
一方で、令和になった今のICTの環境は、
- 教員に一台ずつノートPCがある。
- メールアドレスも一人一人に割り当てられることが多くなった。
- タブレットも一人ずつに割り当てられている。
- デジタル教科書を使って授業ができる。
- 新型コロナの影響で、リモート会議や研修が増えた。
ICT化についていけない教員、周りにいませんか?私もあまり人のことは言えませんが…。
若手教員の質は変わったのか?
今と昔で、採用1年目の環境が違うことは、客観的な事実から述べることができます。
しかし、若手教員の質が変わったかどうかは、どうしても主観的な見方にならざるを得ません。ですから、ここからは私の主観がかなり入るので(一部、他の先生の考えも交えますが)、あくまでも参考として捉えていただければ幸いです。
先に結論から申し上げますと、
教員としての資質に問題のある人が採用されることにより、相対的に昔よりも若手教員の質が下がっている
と感じています。
熱意のある教員は減ったと思う
熱意のある若手がいないわけではありません。ただ、採用人数が増えたことにより、相対的に熱意のある教員が減ったように感じられるのかもしれません。
具体的には、以下のような行動から感じます。
- 休み時間に子どもと遊ばず、採点や学級事務の仕事をしている。
- 授業はカリキュラム通り、淡々と進めていく。あまり脱線しない。
- 子どもの誕生日を祝う、学級全員で遊ぶなど、子どもが喜ぶイベントにあまり関心がない。
- 子どもの成長を話題にしない。
- 自分の学級の児童生徒以外に積極的に関わろうとしない。
単純に、職員室で子どものことを話題にする若手の先生が減ったように感じます。
もちろん、若手でも熱意のある先生はいます。そういう先生は、子どもたちが下校した後の職員室で、「今日○○さんが初めて二重跳びを跳んだところを見れてうれしかった」とか「○○くんがどうしても漢字を覚えられないんだけど、どうしたらいいんだろう」とか、子どもの話題が多いんですよね。
でも、最近は割とサバサバとした熱意のあまり感じられない若手の先生が増えているように思います。
そのため、熱意のあるベテランの帰りが遅く、若手教員の方が早く帰るというのも珍しくありません。もちろん、早く帰るのはよいことなので、それを否定するつもりはありません。
ただ、熱意をもってやっている若手の先生は、やはりベテランの先生より仕事に時間がかかるので、どうしても帰宅が遅くなります。
この記事をご覧になっている、中堅やベテランと呼ばれる先生方の学校ではいかがでしょうか。
真面目だがコミュニケーション能力が低い
「教員って大変な仕事だよ」と世の中に認知されてきている今日。そんな中、教員になろうと思ってなる人たちなので、全般的にすごく真面目な人が多いという印象です。
ただし、真面目で言われたことには黙々と取り組むのですが、コミュニケーション能力が低い先生もそれなりに多いと感じます。
ここでも、コミュニケーション能力が低いと感じる具体例を挙げます。
- やることがわからない時、自分から周りの先生に聞けない。
- 学級で問題があった時、周りの先生に相談できない。→事が大きくなる。
- 職員室で雑談ができない。
- 保護者との関係作りが苦手。保護者への電話や懇談で極度に緊張する。
- 子どもの輪の中に入っていけない。
なかなか自分から話せない若手の先生がいます。こういう先生には、こちらから積極的に話しかけるようにしていました。
一番困るのは、生徒指導上の問題が起きた時に、相談してくれないことです。ベテランの教員でも、生徒指導上の問題は起きます。それなのに、自分のクラスで問題が起きたことを恥ずかしいと感じているのでしょうか、それとも単純に相談できないのでしょうか。とにかく、話してくれないことで気付いた時には大問題になって、対応に苦慮することがありました。
打たれ弱い先生を見かけることが多くなった
人間、誰だって嫌なことがあれば落ち込みます。
教員は本当にストレスのたまる仕事です。嫌な経験をすることは多々あります。理不尽な思いをすることもあります。
最近の若手の先生の中には、打たれ弱い先生が増えたように感じています。本当に私の感覚ですが…。
私を含め、中年や年配の先生って、嫌なことがあると、落ち込むよりも腹を立てる人が多い気がします。「ちょっと聞いて、○○がさ、△△で…。とにかくムカムカした!」と知り合いの先生に愚痴を言っているのをよく聞きました。
不満をぶちまけ、ストレス発散ですね。
ところが、最近は、腹を立てるよりも落ち込んで一人沈んでしまう先生を見ることが多くなりました。私の周りだけでしょうか。
これは、先ほど挙げた「真面目だがコミュニケーション能力が低い」先生に当てはまることが多く、嫌な気持ちを周りに出せなくて抱え込んでしまいます。
そのため、普段でさえあまり口数が多くないのに、さらにだんまりになってしまいます。
そんなことで落ち込まなくてもいいのに、と思うことでも傷ついてしまうので、対応するのに気を遣ってしまいます。言葉は悪いですが、対応の難しい子どもに接するのと同じです。
中には、研究授業の反省会で、改善点を指摘されただけで泣きだしてしまう先生がいました。これでは、周りの先生たちは何も言えなくなってしまいます。
パワハラと言われも困るので、これではお手上げですよね。
逆に、有能な若手の先生は目立つ
ネガティブなことばかり書いてきましたが、教員が不人気というこのご時世に教員への志をもって採用される先生の中には、もちろんすごく有能な先生もいます。
若手の教員が増えてくる中、本当にこういう先生は目立ちます。頼もしく感じます。
最後に
今から20年前と今では、採用の状況が違います。
20年前は競争率が高く、教員になるのが大変だった。今は、競争倍率が下がり、教員になりやすくなった。
その結果、20年前に比べて採用人数が多いことから、「はっきり言って教員として不適格でしょ?」と感じる先生が増えたことは事実です。
ですから、有望だと感じられる若手の先生は、本当に目立つ存在です。もし、この記事をご覧になっている若手の先生がいらっしゃったら、ぜひとも学校の中心的な存在となれる先生になってほしいです。
若手の先生から見て、同年代の先生で「何だ?この先生。こうはなりなくない。」という人がいるかもしれません。
冒頭に書きましたが、いつの時代も「今の若者は…」というフレーズを使います。大抵はマイナスのイメージで使いますが、「〇〇先生は、とても頼りになる先生だね。これからが楽しみだ。」と言ってもらえる先生もいます。
なお、弁解ではありませんが、若手の質が下がったことにクローズアップしたいわけではありません。
中年でも年配でも、「教員辞めろ!」と言いたくなるような先生もいます。こういう先生たちは、きっと若手の頃から教員に向いていなかったのかもしれません。
教員の質を上げるには、教員が魅力的な仕事になることだと思います。給料、仕事の内容が改善され、魅力的な仕事になれば、自然と優秀な人材が入ってくると思います。