多くの学校で、学校評価アンケートが実施されているのではないでしょうか。決まった時期にアンケートを実施する学校もあれば、運動会や学習発表会などの学校行事ごとに実施する学校もあるでしょう。
今回は、この学校評価アンケートについて、教員の立場からだけでなく、一人の保護者としての立場からも意見を述べたいと思います。いつもの通り、完全なる私見ですが(笑)、同意してくださる方もいらっしゃると思い、記事にしたいと思います。
教員の立場から物申す
担任の立場だと?
大体、保護者アンケートは担任が子どもを通じて保護者に渡す場合がほとんどだと思います。そして、回収するのは担任です。
学校行事の時に、廊下や体育館などにアンケートを設置する場合もあると思います。その場に回収箱を置いている場合もありますが、じっくりアンケートを書きたい人は家に持ち帰ります。そして、やはり担任に提出をします。
決まった時期に行うアンケートだと、全校一斉配付で一斉回収となります。この場合、集計は当然担任が行う場合がほとんどです。
担任としては、このアンケートを回収するというのが非常に気の重い作業となります。
アンケートの中身は、「先生は、わかりやすい授業をしているか」、「先生は、一人一人をよく見てくれているか」、「先生は困ったときに相談に乗ってくれるか」などの項目があるはずです。つまり、「先生」と書かれていますが、「先生=担任」と捉えてよいので、つまり自分への評価といえます。
公開処刑…になっちゃうよなぁ
一般企業にお勤めの方であれば、企業アンケートの結果を前向きに捉え、改善につなげていくのでしょう。しかし、教員は違います。
教師になったとたん、「先生」と呼ばれ、どちらかというと上から言われることの少ない教師という仕事は、自分のことを批判されることに慣れていません。ましてや公立学校の教員であれば、アンケートの結果で自分の給料が変わるわけではないので、ただ一喜一憂するだけです。
担任をもつ教師にとって、保護者アンケートが憂鬱だと感じている人は結構たくさんいます。今、この記事をご覧の現役の先生方、いかがでしょうか?好意的な保護者が多いと思いますが、中には好き放題アンケートに記述してくる保護者もいます。そんな一部の保護者の記述に打ちのめされた人もいるかと思います。
アンケートの結果を真摯に受け止め、改善していこうとする前向きな教師もいます。確かに、アンケート結果を受け入れ、自分自身を変えていこうとする教師は、どんどん成長していくと思います。
しかし、偏見かもしれませんが、年配の先生ほど保護者アンケートを毛嫌いする傾向にあるように思います。
年配の先生が若い頃は、保護者にアンケートをとるなんてことは少なかったと思います。「先生の言うことは聞くべきだ」という風潮の中で、教師の仕事をやってきた先生もいます。自分なりのやり方に自信をもち、これまでやってきたはずです。それが、アンケートでことごとく不平・不満や、低評価をつけられることは、今まで培ってきたものを揺るがされることであり、我慢できないことなのです。
ということで、長文になってしまいましたが、担任の立場からすれば、保護者アンケートは実施してほしくないものだと思います。私も現役時代はドキドキしたものでした。もちろん、落ち込んだことも多々ありますよ。
管理職の立場だと?
私自身、校長や教頭を経験したわけではないので、正確には管理職の立場から意見が言えるわけではありません。しかし、教務主任として学校評価アンケートを作成し、全体の集計をして校長や教頭に結果を示す立場を担った経験から、意見をまとめます。
まず、結論から言うと、管理職は学校評価アンケートを実施したいと思っています。なぜなら、学校運営に関する客観的なデータがほしいからです。
教師はわかりやすい授業ができたのか、子どもに寄り添うことができたのかなど、保護者がどのように捉えているかを数値化することができます。管理職は、この数値化した結果を過去何年かのデータと比較し、学校運営がうまくいっているのかの材料とします。
また、こうした学校評価アンケートのデータは、教育委員会や地域の人などに学校の状況を説明するときに使われます。校長の私見ではなく客観的なデータなので、現況を説明しやすいのです。
ただ、管理職は担任とは少し視点が違い、「開かれた学校づくりができているか」、「学校は安全で学習しやすい環境になっているか」などの学校全体に関わる項目の結果も気になります。担任は別にこうした項目には関心がありません。なぜなら、自分への評価とは関係ないと考えるからです。
他には、学校評価アンケートを実施することで、各担任が保護者からどう評価されているのかも、客観的な視点で見ることができます。ただ、保護者からの評価が低い教師は、アンケート以前に管理職あてに苦情の電話があったりするので、すでにわかりきったことですが…。
「教師は子どもに寄り添えているか」のような項目の評価が低い教師は、保護者の信頼度が低いです。
保護者の立場から物申す
私自身も一人の保護者です。教師時代、アンケートに記載されていた保護者の思いと、一人の保護者でもある私の意見を交えながらまとめます。
そんなこと聞かれてもよくわからないぞ!
なぜか、学校評価アンケートには保護者には答えづらい項目があります。それも結構たくさんあるようなきがします。この記事をご覧の先生方のアンケートはいかがでしょうか。いくつか例を挙げます。矢印以下は、単なるツッコミです。
・お子さんは学校の勉強をよく理解しているか。
→いや、むしろ学校側から教えてよ!
・先生はわかりやすい授業をしているか。
→わかりやすい授業かどうか素人にはわかりません。そもそも授業参観では、わが子しか見ていませんよ。子どもの成績がよければわかりやすい授業をする先生、成績が悪ければわかりにくい授業をする先生ということでいいですか?
・お子さんは元気よく挨拶をしているか。
→どんな場面を想定しているの?家族に対して?それとも家の外での話?むしろ親がいないところで挨拶ができているのか教えてください。
・学校は快適な環境になっているか。
→親としては、エアコンあるなし、トイレがきれいかくらいしか判断材料がありません。しばらく学校で生活しないとわかりませんよ。
・学校は安全な環境になっているか。
→安全な環境とは、校門にガードマン、校内のいたるところに防犯カメラということでしょうか。安全の基準がわかりません。
・先生は親身になって接してくれているか。
→特に大きな問題もなく、学校から連絡もなければこちらから連絡もしてないので何とも言えません。
・学校は「開かれた学校づくり」のもと、情報を公開できているか。
→すいません。開かれた学校づくりとはそもそも何ですか?
・学校、保護者、地域が連携できているか?
→は?どうやって判断したらよいですか?
アンケートに答えたからといって、改善されるの?
保護者としてはここが大切です。アンケートに答えたことが、学校改善にきちんと生かされるのか?
学校評価アンケートの結果は、後日文書として配付すると思います。しかし、その内容はものすごく大まかな返答になります。なぜなら、個人的な細かい意見一つ一つに対して返答しないからです。
そのため、来年度は〇〇を重点的に進めていきますなど、無難な答えになってしまいます。というか、そうならざるをえません。
また、アンケートを学校改善につなげるといっても、最後は校長の判断です。保護者の評価やコメントを気にしない校長であれば、校長がやりたいようにやるだけです。ハイ。
そのため、保護者にとっては物足りない返答文書が来たと感じます。逆に担任の立場としては、こんな具体性のない返答文書を配付するくらいなら、アンケートなんか実施しなければよいと思ってしまいます。
学校はサービス業ではないぞ!
学校評価アンケートを実施するたびに、ぴーちょこが思うこと。それは、
学校はサービス業ではないぞ!
ということです。
スーパーマーケットやショッピングモールの入り口に、消費者からの要望とそれに応えたコメントが掲載されていることがあります。サービス業であれば、消費者にとってよりよいサービスとなるよう、店舗や企業が改善できることはしていきます。なぜなら、それが利益につながるからです。
でも、公立学校はサービス業ではありません。私立の学校と違い、地域の教育機関としての役割があります。学校独自の教育方針はありますが、それでも学習指導要領に則り、自治体の管理のもと学校は運営されています。
公立学校は、地域に住む子どもたちの教育機関であって、断じてサービス業ではない!
学校をよくするために、閉鎖的になってはいけませんが、アンケートを匿名でやる必要があるのでしょうか。学校と保護者、地域が連携した学校にしていくのなら、直接意見を聞くべきであって、形式的なアンケートはやらなくてもよいのでは?と思います。
そもそも、「エアコンの設置を!」とか「学校までの道に横断歩道が必要!」などという意見は、学校に言うものではなくて、設置者である自治体に言うべきことです。それをアンケート項目に載せるから、学校に言えばいいんだと保護者が勘違いするわけです。
学校はサービス業ではない!教師の多忙化を解消するためにも、保護者アンケートは不必要!やるなら自治体か教育委員会がやって!
最後に
いろいろいってきましたが、細かいことに配慮しないといけない時代ですから、客観的に学校を見てもらうための保護者アンケートは実施するのは当たり前なのかもしれません。
ただ、担任の先生は結構精神的にダメージを受ける場合があります。一生懸命頑張っていても、批判的な保護者は少なからずいます。中には、文句を書くのが趣味なのではないかと思うくらい、無理難題を突き付けてくる保護者もいます。それなのに、まじめな先生ほどそれを正面から受け止めて、「自分に悪いところがあったんだな」と落ち込んでしまいます。
現役の先生方、理不尽な記述は無視しましょう。しかし、きちんとした意見に対しては、自分への評価や期待だと思って受け止めることは大切だと思います。それが先生方の来年度につながるはずです。
結果に落ち込んだ場合は、一人で抱えないで、同僚に打ち明けてください。そして、その日はやけ食いしたり、趣味に没頭したりして気持ちをリセットしましょう。
少しでも現職の先生方が働きやすい環境となりますように。最後までご覧いただき、ありがとうございました。