切実! 小学校新学習指導要領実施による授業時間数増加への対応

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平成32年度より、小学校で新学習指導要領が完全実施となります。新学習指導要領では総授業時数が増えるので、現場では増加した授業時数を確保しなければなりません。

先日、朝日新聞デジタルで以下のような記事を目にしました。

教える内容多くて…夏休み短縮広がる 公立の小中学校

夏休みを短縮して授業を行おうとする試みです。

新学習指導要領への移行期間中から、すでに授業時間数増加を見越して対応している学校もあるかと思います。しかし、多くの学校は平成32年度からの実施になると思います。

では、実際には授業時間数増加に対して、学校はどのような方法をとることが考えられるのか、まとめていきたいと思います。

目次

実際にどれくらい授業時数が増えるのか

こちら(岐阜県公式ホームページ)をご覧いただくと、新旧比較で授業時数がどう変化するのかわかります。

ぴーちょこ

3年生から6年生で35単位時間増加しているんだね。

1、2年生は変化がありません。3~6年生で35時間増加した理由は、3・4年生で外国語活動が新設され、それが35時間であるため、5・6年生の外国語活動が外国語科として教科化され、年間35時間が70時間に増加するためです。

年間35時間の増加と言ってもピンとこない方は、週当たり1時間(1コマ)授業が増えると思ってください。つまり、今までの時間割にあと1コマ付け足すとイメージすればわかりやすいのではないでしょうか。

たったの週1単位時間増加で何が大変なの?

週当たり1単位時間増えるくらいで何が大変なの?と思う方もいるかもしれません。しかし、現場の先生方ならこの1時間増加がどれだけ大変なことか想像がつくと思います。

時間数が増加するのは、3~6年生です。このうち、多くの学校では、すでに5・6年生がほとんどの曜日で6時限の時間割になっているのではないでしょうか。基本が週28コマで、曜日によっては委員会活動やクラブ活動で週29コマになるところが多いと思います。

週に1日は、全学年が5時間で下校する日を設定しているでしょう。しかし、この日に3~6年生を6時間授業にすると、困ったことが出てきます。それは、校内の各種会議をする時間が確保できなくなってしまうことです。

会議を行うためには、全学年が下校していなければなりません。会議の時間を確保するために、全学年5時限下校の日を作っているのに、それがなくなってしまったら、6限が終了してから会議を行わなくてはなりません。これを多忙化と言わずして何というのでしょうか。

ですから、どこかに1コマ増やすというのは、現状ではそんなに簡単な問題ではないのです。

35時間の授業時数をどう確保するか

学習指導要領の改訂とともに授業時数に振り回されることになって、いったい文科省は何を考えているのか?

ぴーちょこ

「総合的な学習の時間を減らせばいいじゃん」って思っている人、少なくないですよね?

でも、愚痴を言っても仕方ありません。ということで、授業時間数確保の方法にはどんなものがあるのでしょうか。

単純に週1コマ増やす

すでに書いた通り、一番現場が困る方法ですが、一番単純な方法です。1コマの増やし方を2通り挙げてみます。

週5時間の日に1時間追加する。

1限
2限
3限
4限
5限
6限委員会・クラブなど

とりあえず、今ある6限までの枠に収められる。

5限の日がなくなる。週によっては、毎日6時限授業となる。

週6時間の日に1時間追加して、7限目をつくる

1限
2限
3限
4限
5限
6限各種会議委員会・クラブなど
7限

会議の時間を確保するため、5限までの曜日を作ることができる。

下校時刻がさらに遅くなるので、保護者の帰宅時刻、児童の習い事への影響が考えられる。
5限と7限の日が混在するのは違和感がある。

夏休みや冬休みを短縮して、授業を行う

2018年度の7月が猛暑だったこともあり、エアコンが設置される学校が全国的に増えました。そのため、この方法を取り入れる学校も多いのではないかと予想されます。

これまで通り、週当たり28コマの時間割を継続し、たりない35時間分を夏休みや冬休みに行います。

授業日を増やすだけなので、これまでの日課が利用できる。
保護者にとっても、子どもが家にいるより学校にいる方がありがたい場合が多いので、反対意見は少なそう。

多忙な教員が、集中的に自分の仕事に取り組める長期休業が削られるのは痛い…。

土曜日に授業を行う

授業時数が増えるのだから、以前のように土曜日も授業を行えばよいという考え方です。5コマの土曜日を7日間設定すればOKです。ただし、以下のデメリットの理由から、夏休みや冬休みに授業を行うより非現実的だと思います。

授業日を増やすだけなので、これまでの日課が利用できる。

土曜日は、すでに習い事や社会教育の行事などが定着しているので、学校以外への影響が出る。

モジュール学習を行う(15分×3日)

隙間時間を活用して、1コマ分の時間数を確保する方法です。ほとんどの場合、15分の学習を週3日行って1コマ確保すると思います。登校してから1限が始まるまでに、朝学習や朝の読書タイムなどの時間を設定している学校がたくさんあります。こういう時間がすでに設定されている学校は、この時間を教科学習に変えればよいということになります。個人的には、この方法が最も現場に影響が少ないと思います。

朝(15分活動)15分15分15分
1限
2限
3限
4限
5限委員会・クラブなど
6限

すでに15分の活動時間を使って何か活動している学校は、運用がスムーズに切り替えられる。
見た目の授業時数が増えないので、下校時刻を変える必要がない。

現在、15分の活動時間がない学校は、日課の変更が必要になる。
15分ずつの授業では、やることが限られる。

60分授業を週3日行う

朝(15分活動)15分15分15分
1限⑦45分⑬45分⑲45分
2限
3限
4限
5限委員会・クラブなど
6限

60分授業を週3日行えば、
 60×3=180 で、45×4=180 と同じになります。

つまり、60分授業を週に3日設定すれば、45分授業が4コマ確保されたのと同じことになります。上の表で見ると、火・水・木曜日は朝の15分の活動と1限の45分をくっつけて60分授業を行うということです。

これまでの時間割の中で、3コマが60分になるだけなので、それほど大きな変化にならない。

小学校3~6年生にとって、60分授業はやはり長い。45分授業に慣れているので、集中力が切れることが予想できる。

ぴーちょこ

15分の活動より、60分の方が授業をしやすいかもしれませんね。

まとめ(ボヤキ含む)

いろんな方法がありますが、最後は教育委員会か、各学校の校長の判断によると思います。すでに新学習指導要領が実施されていますが、この記事をご覧の先生方の学校はどの方法でしょうか。

この記事をまとめていて思いました。日々子どもたちの前で授業をしている担任の先生にとっては、あまり関心がないだろうなと。現場の先生方は毎日が忙しいので、32年度の日課についてゆっくり考える暇がありません。しかも、言われた通りの環境で働くことに慣れてしまっています。

1単位時間増加するのは、想像以上に負担であることを、文科省の人たちに知ってもらいたいです。いかに現場が忙しく、子どもと向き合う時間がないのかを。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

元教員。
公立の小中学校で20年間勤務した経験を生かし、今をがんばる先生方を応援するサイトを作っていきます。

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