親は一生、教師は一時 ~子どもの言いなりになる親~

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どうも、元公立学校教員のぴーちょこです。

教員をしていると、必ず出会うモンスターペアレント、通称モンペ。この後は、モンペで統一させてもらいます。本音を言うと、「モンペ」なんて言葉は使いたくないのですが、学級運営、学校運営に支障が出るような理不尽な要求をしてくる保護者がいるのも事実です。通常の苦情や相談とは違います。

マスコミもこぞって取り上げるので、モンペと言う言葉は世の中に定着しています。しかし、大半の保護者は協力的で、学校のやり方を理解してくれます。一部があまりにも過激なために、どうしても「最近の親はクレーマーが多い」というイメージになってしまいます。これは、教師についても言えますね。多くの教員はまじめに働いているのに、一部の教員が不祥事を起こすため、教員の質が下がっていると言われます。

さて、今回は私の経験をもとに、モンペの中でも「子どもの言いなりになる親」に焦点を当てて紹介します。教員のみならず、保護者も見ていただけるといいかなあと思います。教員の気持ちがわかると思います。

目次

親は一生、教師は一時

親は一生、教師は一時。

モンペを相手にしなければならない時、私が心のなかでよく唱えていた言葉です。「モンペの子を担任するのはとりあえず一年、つまり人生で一時だけ。辛いけどしばらく我慢すれば終わる。」と思っていないとやっていけないくらい、心折れそうになる時もあるからです。

「親は一生、教師は一時」という言葉は、本来であれば以下のような意味でしょう。

  • 教師が子どもの成長に関われれるのは一時であるから、責任をもって関わらなければならない。
  • 一時であれ、子どもの成長に関わる教師は、やりがいのある仕事である。

しかし、モンペとその子に対しては違い、以下のような意味になります。

  • モンペと一生付き合うわけではない、とりあえず耐えろ。
  • モンペの子と一生付き合うわけではない、成長させようと思わなくてよい。
  • とにかく、自分の心を守れ。

教師は一時の関わりだけだから、「モンペが何か言ってくるのならその子どもにはできるだけ苦情が来ないような対応をしよう」と考えるようになってしまいます。学級には他の子もたくさんいるのに、モンペに振り回されていられません。そんなストレスを教師は抱えたくありません。

そうなると、結局は子どもの成長を願って接するよりも、モンペに何か言われないような対応をしようと考えるようになります。つまり、それは極端な言い方をすると、

「その子がどうなろうと、自分の知ったことではない」

ということです。教師にあるまじき態度だと言われそうですが、教師だって人間です。常識が通用しない保護者にまともに対応していられません。

もちろん、そのモンペの子に対応しないというわけではありません。むしろ、気を遣って対応することになります。モンペとの無用なトラブルを避けるためです。それで、モンペは満足します。自分の子が目をかけられているのだから。しかし、その子どもへの気の遣い方は、絶対にその子のためにならないと思います。

繰り返しますが、「その子がどうなろうと、自分の知ったことではない」のです。親は一生ですから、そのうち困るのは親です。

全国の先生方が、理不尽で正当な理由もない要求をしてくる保護者の対応に苦慮しているのです。現場で苦労している先生方、いつかは終わります。なんとか乗り切りましょう!

とにかく、モンペに対しては一人で対応しようと思ってはいけません。学年主任や管理職にも助けてもらいましょう。

子どもの言いなりになる親の実例

ここからは、私が経験したことを紹介します。親が子どもの言いなりになってしまっていて、常識が通用しないという保護者です。

子ども同士のトラブルで、自分の子の言うことしか信じない親

タイトルだけだと、こんな例は全国に星の数ほどあるでしょう。確かに、普段学校にいない保護者にとっては、子どもが言うことが学校を知る方法ではあるのですが、それでも常識のある親なら、子どもが変なことを言ったら我が子を疑います。それはちょっとおかしいんじゃない?うちの子が嘘をついているかも?と。

それでは紹介します。

小学校5年生での給食中に起きたトラブルです。A男とB子が些細なことからケンカになりました。B子がA男をからかったら、A男が怒ってB子を叩いたという状況です。普段のA男とB子は仲が悪いわけでもなく、一緒に遊ぶこともあります。しかし、時々ケンカもするという間柄です。

双方を呼び、ケンカになった原因を聞きました。B子がからかったことがきっかけで、怒ったA男が叩いたという話で間違いありませんでした。B子にはケンカのきっかけを作ったことをA男に謝罪させました。A男には、腹が立っても暴力に訴えてはいけないことを話し、叩いてしまったことをB子に謝罪させました。お互いその場でわだかまりがないか、他に何か言いたいことはないか確認した後、特に何もないということだったので、解散させました。

夕方になって、A男の母親から怒りの電話がかかってきました。

「B子とケンカになったことをA男から聞いた。うちの子がやられたのに、うちの子だけに謝らせるとはどういうことか、うちは被害者だ!」という内容です。ということだったので、ケンカのいきさつについて説明し、A男だけが謝ったのではなく、B子も謝ったという話もしました。しかし、「うちの子は謝ってもらっていないと言っている。それに叩くふりをしただけで、実際には叩いていない。うちの子だけが悪者にされて、謝罪させられてとても傷ついている。どうしてくれるんだ!」と言ってきます。

こちらは冷静に状況を説明しました。A男とB子、そして私の3人だけで話をし、A男はB子から「ごめんね」と謝られたときに「いいよ」と言ったこと、A男は叩いたことはよくないことだと認め、自分から進んで謝ったこともきちんとA男の母に伝えました。

しかし、「うちの子が嘘を言っているというのか!」と言い、おさまる気配がありません。そのうち、B子の悪口へ話が変わっていき、「もういい!」という言葉とともに電話が切れました。

次の日、A男を呼び、家に帰った後でどんなことを母親に話したのか聞きました。なかなか口を割りませんでしたが、矛盾点をついていくと話し始めました。結局は以下のような状況でした。

A男が母親に、「ケンカしちゃった。」と軽い話のつもりで言ったところ、「なんか嫌なことをされたの?あなたは何もしていないよね?」とすごい剣幕で聞かれた。ここで、相手を叩いたことを言ったら、自分がものすごく怒られると思い、「B子がからかってきた。僕はずっと我慢していたけど、なかなか止めないから叩くふりをした。そうしたら、先生が怒って「叩いちゃダメだろ。謝りなさい。」と言ったから謝った。」と、とっさに嘘をついたのだということ。

A男を担任したことがある先生に聞いたところ、A男の母はA男が言うことを疑わず、A男自身も母が自分の言うことを信じることを知っているから厄介だ、と言っていました。親に怒られそうなことは、全部ねじまげてA男が伝えるので、何ともならないことが過去にも何度かあったそうです。

その後ですか?当然A男から聞いたことをA男の母親には伝えていません。どうせ信じてもらえないので。ただ、A男が大きくなって、母親を乗り越えていったときに苦労するのは母親だぞ、こっちには関係ないという気持ちになりました。

こっちは一年の付き合いだけど、あんたは我が子と一生付き合うんですよ。手に負えなくなっても知りませんよ。

子どもが嫌がることを全て排除しようとする親

次は、小学校1年生を担任した時の話です。

C子の母親は、とにかくC子がかわいがっており、それ自体はすばらしいことだと思います。しかし、愛情がねじ曲がっており、C子が学校生活で困ってほしくないという気持ちが強すぎるため、とんでもない要求をしてきた保護者です。

実際に言われたことを紹介します。

  • 給食は好きなものだけ食べさせてほしい。私が作ったもの以外はあまり食べないので、きっと給食はあまり食べないと思うが、家で食べさせるので大丈夫。
  • マットで前転をするのがこわいというので、マットの間は見学させてほしい。
  • 高いところが苦手なので、遊具で遊ばせないでほしい。

常識的な親であれば、「苦手かもしれませんが、少しでもがんばらせてほしい」という気持ちになると思います。しかし、この保護者は、わが子が苦労してほしくないのです。苦労して泣いているのがかわいそうだと…。

今ここで苦労しないと、先の人生でもっと苦労することは、人生の先輩としてわかりそうなものなんですが…。

実際には、ほんのちょっとだけでもがんばるように、私は声をかけました。もちろん、ほんのちょっとだけです。なぜなら、ちょっとの困難でC子はすぐに泣いてしまうからです。泣いて帰ると、保護者から必ず連絡が来ます。何で無理してやらせるのか、この子にはこの子のペースがあるんだとか何とか…。

この子が今どんな大人に成長したのでしょうか。どんな大人になっていても、今の私には関わりがありません。しかし、親にとっては一生わが子です。親が困るようなことになっていないことを願うばかりです。

まとめ

今回は、モンペの中でも、「子どもの言いなりになる親」についてまとめました。

子どもを導いていかなければならない親が、子どもかわいさに言いなりになってしまい、常識が通用しなくなってしまいます。

教師ならいろんな子どもと接する中で、「子どもは嘘をつくものだ」ということを知っています。子どもは子どもなりに、自分を守ろうとするものです。

悪いことをしても、怒られるのはこわい。だから嘘をつくけれど、それがバレてもっと怒られた。正直に認めた場合は、やったことは怒られるが、正直に言えたことは褒めてもらえた。

そんな経験をしていくことで、正直に認めることの大切さと嘘をつくことがいけないことだと学んでいきます。

しかし、自分の保身のために嘘をついたところ、それでうまくいく経験をしてしまえば、次からも確実に嘘をつきます。親をだませてしまえば、怖いものはなにもありません。そういう子は、教師が親にペコペコするのも知っているのでしょう。

嫌なことを回避するのもそうです。ダメなことをきちんとダメだと教える教師を「こわい先生」と子どもが親に伝えれば、「あの先生のことをうちの子がこわいと言っている。何とかしてくれ。」という話になってしまいます。(これも、私の経験談です。担任でないクラスの子に、いけないことをいけないと指導しただけで、苦情の電話が管理職あてにかかってきました。)

こうした一部の保護者のために、大きなストレスを抱える先生がたくさんいます。信念に基づいて、子どもたちのためにと頑張ろうとするのに、足元をすくわれる形になってしまいます。

現場で頑張る先生たちへ。じっくり話せばわかってもらえる保護者はモンペではありません。しかし、常識が通用しないモンペに出会っても、最長で1年の付き合いです。次年度は管理職に言って、断固拒否すれば担任することはないでしょう。

保護者の方へ。といっても、もしこのサイトにたどり着いて、このページをご覧になる保護者の方は、きっと常識のある保護者だと思います。モンペと言われる人が、こんな私の意見を見るとは思えないので。

ですから、常識のある保護者の方へ。こんな非常識な保護者もいるのだということ、そんな保護者相手に現場の先生は奮闘しているのだということを知っておいていただけるとうれしいです。

保護者の方から、「お世話になっています」「ありがとうございます」という、ちょっとした言葉をかけていただけるだけで、現場の先生は頑張ろうという前向きな気持ちになります。

教師も保護者も、子どもたちをよくしたいという目的は一緒です。互いに協力しながらやっていけるのが理想です。

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この記事を書いた人

元教員。
公立の小中学校で20年間勤務した経験を生かし、今をがんばる先生方を応援するサイトを作っていきます。

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