公立学校はさまざまな学校規模があります。今回は、小規模校で働くことになったら気をつけることについてご紹介します。
そもそも学校規模とは、
- 小規模校・・・11学級以下(小学校、中学校とも)
- 大規模校・・・小学校は25学級以上、中学校なら19学級以上
私は、小学校の小規模校で勤務した経験があります。しかも、全校児童数80人にも満たない小さな学校です。
1クラスあたり15人程度です。10人以下の学級を担任したこともあります。
ということで、その経験をもとに、小規模校で勤務するときに気をつけたいことをご紹介します。
ただし、小規模校の中でも
・学年に1クラスの学校
・1クラスが20人以下の児童数が少ない学校
を想定して話をしていきます。適正規模校に近い小規模校には該当しない部分が多くあります。ご了承ください。
まずは、小規模校の特徴からメリットとデメリットについて紹介します。
メリット
子どもに関わるいろんなことに時間がかからない
小規模校でも、学級の人数が35~40人程度いたら該当しませんが、学級の人数が少ない小規模校では、子どもに関わる事務作業の時間が圧倒的に短くなります。
学級の人数が10人に満たなかったときは、単純に40人学級の4分の1以下の時間で済みます。
例えば、以下のような感じです。
- 宿題は、登校直後に提出させて、その場でチェックし返却
- テストの採点は10分もあれば終わる
- 通知表の所見文も1時間もあれば終わる
- 指導要録、保健関係の書類作成もすぐ終わる
- 給食の配膳も10分で終わる
1学級の児童数が減れば、それだけ教師の負担は減ります。働き方改革に一番必要なのは、教員数を増やして仕事量を減らすことかもしれません。財政的に苦しいでしょうが…。
子どもたち一人一人をしっかり見てあげられる
学級の人数が少ないと、一人一人にかけてあげられる時間が増えます。学習指導はもちろん、日常的な会話にも多くの時間をとることができます。
40人学級ではなかなか時間をとることが難しいリコーダーの個別指導や、家庭科の裁縫の技術指導も、授業時間内に行うことができます。
とにかく、一人一人の子どもとの関わりが深くなり、教師としてはとてもうれしいことです。
自分のペースで学年のことを進められる
学年に1クラスなので、自分のペースで学年の仕事を進めていくことができます。また、運動会や学習発表会など、自分の思いでやりたいことを決めていくことができます。
でも、特別支援学級があれば、きちんと連携しましょうね。
すでに教職経験が何年もあり、自分で考えてやっていくのが好きな先生にとっては、とても働きやすい環境だと思います。
ただし、学年に1クラスというのはデメリットもあるので、それについてはデメリットの欄でご紹介します。
学校の備品や特別教室などの使用に余裕がある
学級数が少ないので、学校の備品や特別教室を使用するときに余裕があります。
例えば、音楽の授業で楽器を演奏させたいとき、トライアングル、カスタネット、ウッドブロックなどの小さな楽器であれば、子どもの人数より数が多い場合がほとんどです。
移動式の木琴や鉄琴、大太鼓や小太鼓など、大きめの楽器の数は多くありませんが、児童数が少ないので、交代で使用しても1時間の授業の中で全員がさわることができます。
また、どうしても音楽の授業時間を移動したいという場合、学級数が少ないので、音楽室が空いている時間がたくさんあります。そのため、時間割変更が容易にできます。
時間割変更はできるだけしない方がいいんだけどね。でも急な変更にも対応できるってことです。
デメリット
一人当たりの校務分掌が多い
これは、小規模校最大のデメリットだと思います。学校規模に関わらず、どの学校も決まった校務分掌があります。しかし、教員数は少ないのですから、必然的にいくつもの校務分掌を掛け持ちすることになります。
そのため、児童会主任と社会科主任と道徳教育推進教師を担当する先生、保健主事と算数主任と家庭科主任と図書館教育を担当する先生、のような感じになります。
学年のことを全部自分で決めなくてはならない
メリットのところで紹介しましたが、学年のことを自分のペースで進めたり自分で決めたりできるのは大きなメリットです。
しかし、反面、学年のことを全部自分で決めることになります。全部自分で決めるのは大変なので、基本的には前年度の担任に聞いたり、前年度までの資料を参考にしたりすることになります。
学年のことは自分に任されるので、それだけ責任も大きくなります。もし、やることを忘れていたとしても、学年には自分しかいないので、誰も教えてくれません。
子どもたちの人間関係が固定される
学級数が1クラス、おまけに児童数が少ないため、人間関係が固定されがちです。もちろん、学級全体がよい雰囲気であれば問題ないのですが、児童同士の関係がこじれてもクラス替えがないため、高学年になるほど難しくなる場合があります。
人間関係がドロドロした学年になってしまった場合、そこを受け持つ担任は大変な思いをしながら学級を変えていこうと努力することになります。クラス替えでリセットするということができないからです。
団体スポーツが行えない
これは、少人数であることのメリットの裏返しです。バスケットボールの試合をやろうと思っても、10人に満たなければ5対5の試合はできません。
ベースボール型ゲームをやる場合も同様で、単純に2チームに分けただけでは、守備側の人数が足りません。
そのため、人数のいるスポーツをやる場合、他学年と合同で取り組むなど、授業の進め方に工夫が必要になります。
保護者の期待が大きくなりがち
学級の人数が少ないため、保護者の中には「きめ細かな指導ができるでしょ」という姿勢の人が少なからずいます。
「少人数だからできること」を保護者達は求めているので、保護者の期待が大きくなりがちです。
ですから、子どもたち一人一人を大切にしながら、なおかつ保護者との関係を築くことが大切になります。
小規模校に勤務するときに気をつけること
メリット、デメリットをご覧いただいたことで、気をつけることは想像できたかと思います。
計画的に進めること
メリットでもデメリットでも挙げましたが、学年の担任は特別支援学級がある場合を除き、自分一人なので、何でも計画的に進める必要があります。
学校行事についてはもちろんのこと、普段の授業も自分で計画を立てて進めていかなければなりません。
学級が複数あれば、他の先生と学習進度について話をすれば、遅れているのか早いのか気付きます。しかし、学年1クラスだとそれができません。
自由に自分で進めれる反面、自分自身に課せられる責任も大きくなると意識することが大切です。
保護者と良好な関係を築くこと
児童数が少ないので、必然的に児童との関わりが濃くなります。同時に、保護者との関わりも規模の大きな学校より多くなります。
小さな学校は、保護者ネットワークが密接です。そのため、教師の悪評があっという間に共有されやすいです。
保護者に媚を売るわけではありませんが、保護者と良好な関係を築くことが大切です。もちろん、保護者と良好な関係を築くのは学校規模に関係なく大切なことですが、小規模校ほど意識することが大切だと思っています。
保護者と良好な関係が築ける教師にとっては、とても働きやすい環境になります。数年働けば、知った保護者ばかりになります。つまり、自分を助けてくれる保護者ばかりになるのです。
職場の同僚とよい関係を築くこと
小規模校であれば、教職員の数も少ないです。そのため、教職員が連携し、協力していかないと学校が回っていきません。一部の優秀な先生が頑張るでは回っていきません。
小規模校は、小規模校ならではの難しさがあります。以前から勤めている先生はそのことを知っているので、転任者に対していろいろ声をかけてくれると思います。
少人数の学校であれば、どの先生も学校全員の子どもの顔と名前をおぼえています。みんなで子どもたち全員を育てるという意識が高いのです。
そのため、職場の同僚とよい関係を築くことも大切なことです。
職場の同僚とよい関係を築け、保護者とも良好な関係を築くことができたら、小規模校はとても働きやすいところだと思います。