「教育実習の前に」というタイトルで続いてきた、教育実習へ行く人向けの記事の3つめです。
今回は、「実践編」として、具体的な取り組み方を紹介していきます。何も知らずに行くのと、事前にある程度知識をつけてから行くのでは、教育実習の充実度が全然違います。
特に大きく変わるのは、最初の一週間です。何も知識を得ずに教育実習に行くと、最初の一週間は右往左往している間に終わってしまいます。
「こうやって行動すればいいんだ」と知っておけば、教育実習が始まってから慌てずに済みます。
しっかり準備をして教育実習に臨めば、実り多い教育実習になります。逆に場当たり的な行動では、得られるものが少なくなります。
教育実習初日のあいさつを考える
教育実習初日は、教職員、それから児童生徒へのあいさつの機会があります。話すことをしっかり考えておきましょう。
教職員へのあいさつ
多くの学校で、朝の打ち合わせが行われていると思います。その時に、「本日から教育実習が始まります」という流れから一言あいさつをすることになります。
教職員へのあいさつは、長くなくてよいです。というか、朝は忙しいのでシンプルなあいさつでかまいません。
- 大学、学部名(通信制などであれば、そのことを伝える)
- 名前
- 何回目の教育実習か
- 教育実習への思い
あいさつ例です。
おはようございます。本日から教育実習でお世話になります、〇〇大学△△学部□□コースのぴーちょこと申します。今回は副免教育実習なので、2回目の教育実習となります。限られた期間ではありますが、一生懸命努力し、多くのことを学んで教師になる夢を叶えたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
おはようございます。ぴーちょこと申します。私は一度一般企業に就職したのですが、教師への夢を諦めきれずに退職しました。現在は通信制の〇〇大学で、教員免許を取得するために日々励んでおります。独学で学んできたことばかりなので、実際の教育現場で実習ができることをうれしく思います。精一杯がんばりますので、ご指導の程、よろしくお願いします。
大きな声で、明るくはきはきと言いましょう!
全校の子どもたちへのあいさつ
教育実習は、ほとんど月曜日からスタートすると思います。
月曜日は多くの学校で、全校朝会や全校朝礼が行われます。この場で、全校の子どもたちへのあいさつをすることになります。
教育実習先の学校規模によりますが、何百人の子どもたちの前であいさつをすることになります。きっと緊張すると思いますので、話すことを事前に考えておきましょう。
話す内容は、教職員向けと違い、子どもたち向けに話しましょう。子どもたち向けの話とは、「子どもたちの興味をひく内容」が含まれている話です。
みなさん、おはようございます。このたび、教育実習として、この●●小学校に来ましたぴーちょこです。みなさんと会えるのをすごく楽しみにしていました。私はなわとびが好きなので、なわとびが好きと言う人は、ぜひ声をかけてください。●●小学校のことは、みなさんの方が詳しいので、私が困っていたら教えてください。それでは、これからよろしくお願いします。
おはようございます。このたび、教育実習としてこの△△中学校に来ましたぴーちょこです。担当教科は社会科です。私がみなさんと同じ中学時代は、バスケ部に所属し、3年間仲間とともにがんばりました。また、中学2年生のころからギターを始めて、今でも続けています。好きな音楽は、最近だとネット系ミュージシャンの□□□です。みなさんといろいろな話ができればと思っています。どうぞよろしくお願いします。
二つとも割と無難なあいさつなので、もう少し自分の紹介を入れてもいいでしょう。自分のことを話すことで、興味をもってくれた子が話しかけてくれます。
なお、「教育実習をがんばります」という決意は、子どもたちにとっては関係ないことなので、言わなくていいです。
学級でのあいさつ
教育実習生は、基本的に指導教官の学級で過ごすことになります。ということで、最後は学級でのあいさつが待っています。
もし、学級でも改めてあいさつをする機会が得られるなら、全校の子どもたちの前であいさつした内容について、さらに詳しく自己紹介をします。
しっかり自分を印象付けたい!
簡単にできる、印象的な自己紹介にするコツを紹介します。
クイズ形式で自己紹介をする
クイズ形式にすることで、一方的な話から双方向のやりとりが生まれます。つまりコミュニケーションが発生します。
例えば、「私の好きな遊びは何でしょう。①なわとび、②ドッジボール、③おにごっこ、さあどれでしょう。①だと思う人!手を挙げて!」と聞きます。
すると、全校朝会での話を覚えているので、①に手を挙げるでしょう。
「すごい、みんなよく話を聞いていてくれたんですね。うれしいです。」と子どもたちをさりげなく褒めてあげれば、子どもたちとの距離が早速縮まります。
自分の写真を見せる
百聞は一見に如かず。口で説明するよりも、写真を見せた方が子どもたちの印象に残ります。
バスケで頑張ってきたなら、大会の集合写真を。ギターについて話したいなら、演奏している写真を。自分がどんな人物かイメージしてもらいやすくなります。
授業について
次は、教育実習で最も中心となる授業についてです。
授業は、授業を見て学ぶ「観察」、授業者の補助に入る「参加」、自分が中心となって授業をする「実習」があります。それぞれのポイントについてまとめていきます。
授業の観察
教育実習初めの数日から一週間程度は、授業の観察がほとんどです。バインダーにメモ用紙をはさんで、授業で気が付いたことをメモします。しかし、何を見るのかという視点がないと、何もわからぬまま終わってしまいます。
授業を観察するときの視点は、大きく2つに分けられます。
- 授業の進め方
- 児童生徒の様子
それでは、それぞれについてまとめていきます。
授業の進め方
これは、授業者の授業を進める上でのテクニックを見ます。といっても、授業の細かい部分は教育実習の段階ではあまりわからないと思います。そこで、以下の点を見て、大事だと思ったことをメモしましょう。
- 声の大きさ
- 話す速さ
- 教師の視線
- 全体への指示の出し方
- 個別指導をするときの言葉がけ
- 子どもの発言の受け止め方
- 板書
声の大きさ、話す速さ、視線の3点を特にしっかり見てください。
児童生徒の様子
授業を考えるためには、子どもたちを理解しておくことが重要です。
積極的に発言できる子、勉強が苦手な子、よく理解しているけど発言することに消極的な子など、学級にはさまざまな子どもたちがいます。
最終的に、その学級で授業を行うのですから、子どもたち一人一人の授業での様子を把握しておかなければなりません。
記録するには、座席表を使うのが便利です。
座席表授業者の邪魔になってはいけませんが、観察をするときは、必ずいろいろな角度から子どもたちの様子を見てください。
後ろからしか見ていないと、子どもたちの表情は分かりません。
授業への参加
授業の観察がある程度終わると、次は授業に参加することになります。
参加については、指導教官の指示を受け、実際に授業でどんな参加をしたらよいのか理解した上で臨んでください。
多くは、授業中の個別指導になるでしょう。個別指導は、児童生徒理解を深める絶好のチャンスです。直接関わることで、何が得意で何が苦手かよくわかります。この過程が、学習指導案作りに生きてきます。
授業の実習
教育実習も中盤になると、自分で授業をする「実習」が始まります。
最初の授業はとてもドキドキするでしょう。しかし、心配することはありません。最初からうまくいくことはありません。
私も、最初の授業実習で子どもたちを混乱させた挙句、途中で指導教官が授業を引き継ぐという苦い経験をしました。
実習生がそれなりに授業をうまく進めるためには、以下の3点がポイントです。
- 教材研究
- わかりやすい説明(話し方)
- 子どもたちとの関係
教材研究
まず、教材研究ができていないと、しっかりした授業ができるはずがありません。
実習生の授業でよくあるのは、子どもたちから予想外の答えや質問が出てパニックになることです。完璧を求める必要はありませんが、しっかり教科書を読んで、子どもがつまずくならどんなところか予想しておくことが大切です。
わかりやすい説明(話し方)
指導教官の授業をよく見ていれば、声の大きさや話す速さ、そして視線などに工夫があるのに気づくと思います。
授業の上手な先生は、子どもたちを引き付けるために、抑揚のついた話し方をします。一本調子の話し方では、淡々とした説明口調になりがちです。
指導教官だけでなく、いろんな先生の授業を見せてもらう機会があれば、いろんな先生の話し方を学びましょう。
子どもたちとの関係
教育実習生にとって、子どもたちとの関係は授業においてとても大切です。
子どもたちは、教育実習生の授業に慣れていないことを知っています。そして、先生になるために頑張っていることも知っています。
子どもたちとの人間関係が良好であれば、子どもたちはそんな実習生を助けようと、がんばって授業に参加してくれます。
指導教官が気を遣って、子どもたちに「助けてあげてね」って話していると思います。
ですから、授業以外の時間に子どもたちと積極的に関わることがとても大切です。
教育実習の終了近くには、集大成としていろんな先生に見てもらう授業実習が行われます。多くの先生に見られ、心臓はバクバク、喉はカラカラになると思います。しかし、そんな実習生を子どもたちが助けてくれます。
生徒指導について
教育実習生にとって、授業以上に難しいのが生徒指導かもしれません。
実際に子どもたちを指導する場面に出くわしたとして、上手に対応することは難しいです。特に、いじめを疑うような以下のような場面を見ることがあるかもしれません。
- 仲間外れにしている
- 悪口を言っている
- 遊んでいるように見えて、嫌がらせをしている
もしそのような生徒指導に関わる場面を見たら、必ず以下のように対応しましょう。
・とりあえず、中に入って状況を確かめる。
・指導教官に報告する。
いじめのような複数人に関わる問題について、適切に指導するのは難しいです。教育実習生が直接指導に入らない方がよいでしょう。しかし、見て見ぬふりは絶対にいけません。
おかしいなと気付いたら、「どうしたの?」と話しかけてみてください。何か良からぬことをしていれば、逃げるように「何でもありません」と言って散っていくかもしれません。
とりあえずは、その場をおさめることが大切なので、必ず声をかけてください。そして、すぐに指導教官にあったことを報告してください。
なお、廊下を走っている、時間を守らず遊んでいるなど、個人的なことであれば、きちんと注意しましょう。
子どもとの関係を気にするあまり、注意できない実習生がたくさんいます。しかし、デリケートな生徒指導事項でなければ、いけないことはいけないとはっきり言うことも、教育実習で学んでほしいことの一つです。
最後に
教育実習を終えて、先生になりたいという決意が固まったという実習生をたくさん見てきました。私が直接担当した実習生も、現在は教員として活躍しています。
教育実習の期間はわずか3~4週間程度ですが、本当に多くのことを学ぶことができます。
時に辛いときもあるでしょうが、それ以上に楽しさややりがいも感じられる実習です。
すばらしい教育実習になることを願っています。