元教員のぴーちょこです。
どこの学校でも、授業参観が行われますね。中堅からベテランの先生は慣れているかもしれませんが、経験の浅い先生にとっては大きな行事です。
普段はかかない汗をかき、保護者の視線が気になってしょうがない。おまけに巡回してくる校長や教頭の視線にビビる…という経験をしたことはありませんか?
さて、そんな授業参観のための「参観授業」についてが今回の話題です。
参観授業で忘れてはいけないポイントは、以下の1点です。
保護者は、わが子を見に来ている
このことを忘れずに、授業を考えていくことが大切です。しかし、参観授業は教師が見られる場と勘違いしている先生がいます。こういう先生は、しっかり教えているところを見せなきゃと考えてしまうため、教師主導の授業をしてしまいます。
教師主導になれば、当然子どもたちは受け身になります。じっと座って教師の話を聞くだけのわが子を、保護者は楽しみに見に来ると思いますか?
保護者は、わが子を見に来ているのです。教師を見に来るわけではありません。もちろん、担任はどんな先生なんだろうと見に来ますが、第一の目的はわが子の姿を見ることです。
そんな保護者が納得する参観授業づくりには、3つのポイントがあります。3つのポイントをしっかり押さえて、子どもが活躍できる参観授業をしてください。それが、保護者からの信頼につながっていきますよ。
はじめに、参観授業あるある
まずは良い悪いではなく、授業参観あるあるです。下記のような先生がいます。( ´∀` )
- 普段着ていないのにスーツ姿になる。
- 普段の授業より饒舌である。
- 普段は言わない冗談を言う。しかも、保護者を笑わそうというのが見え見え。
- いつもはチョークしか使わないのに、掲示物が作成されている。
- いつもはないのに、教室に花が飾ってある。
ほとんどの項目は、私自身の現役時代のことです。でも実は多くの先生に当てはまっているんですよね。「先生、今日は授業参観があるからスーツ着てるの?」と何回言われたことか…。
参観授業づくり3つのポイント
自分が若い頃、参観授業に向けて何をしたらよいかわからず、先輩の先生に相談したことがあります。返ってきた答えは、「先生は若いんだから、先生の若さを生かして元気にやればいいよ。」でした。
きっと私にプレッシャーをかけないための心遣いだと思うのですが、若さだけで参観授業が成功したら、私は今頃授業名人として、全国で引っ張りだこになっているはずです。
知りたいのは、具体的な方法です。やはり勉強しなければ…。でもどうしようということで、とりあえず本屋に行きました。そのとき購入したのが、「向山型参観授業づくりの法則」という本でした。
そこには、参観授業づくりの3原則が書いてありました。
①全員の子どもが活動する場面をつくる。
「向山型参観授業づくりの法則」(明治図書)
②親子でいっしょに考えられる問題を出す。
③バラエティーに富んだ授業活動を組み立てる。
以下、参観授業づくりの3つのポイントとしてご紹介いたします。概略しかお伝え出来ないので、詳しく知りたい方は、ぜひこの本を手に取ってみてください。
その1 全員の子どもが活動する場面をつくる
これは自分もずっと意識していたことです。多くの先生も自然と意識していると思います。1時間の授業の中で、子どもたちに発言の場を作ろうと考えますよね。
簡単なことだと、
・順番に指名して発言させる。(簡単な問題、音読など)
・発表会を行う。(音読発表会、総合的な学習で学んだことの発表など)
などがあります。もちろん教科によりますが、保護者にわが子の活動する姿を見せるということです。
大切なことは、全員が必ず答えられる、または発表できるものにすることです。簡単なことであっても、子どもにとっては、保護者の前で緊張する中での発言です。子どもたちが自信をもって答えられるものにしてあげましょう。
そして、子どもたちの発言や発表のあとは、短い言葉で良いので一人一人褒めてあげましょう。
「いいね」「上手に言えたね」など、短い言葉で褒めてあげましょう。保護者はそれを聞いて、心の温かい先生だなと感じます。
その2 親子でいっしょに考えられる問題を出す。
本を読んだとき、「親にも考えさせる」という視点に、「なるほど!」と感心したのを覚えています。
例えば、算数の学習で、「これらの展開図の中から、立方体ができるものとできないものに分けましょう。」という課題を出したとします。大人であっても即答することはできず、考えなければならない問題です。
ここで、「保護者の方に聞いてみようかなあ。」と言うと、保護者が「えっ!?」という顔をします。 教師にとっては実に良い反応です。 当てられるかもと思ったのか、提示された展開図を見て、頭の中で組み立てている保護者は様子を見ればわかります(笑)。
しかし、そのまま本当に保護者を指名するような雰囲気にしてしまうと、保護者がそそくさと教室を出て行ってしまいます。そこで、「では、いろんな人と相談してみましょう。おうちの人と相談してもいいですよ。」と指示を出すのです。
「いろんな人と相談してみましょう」という指示が先なのは、保護者が来ていない子への配慮です。
その3 バラエティーに富んだ授業活動を組み立てる
これは、単調な授業にしないということです。自分の席に座ったまま終わるのではなく、様々な活動を1時間の授業の中に組み込むということです。
この考え方は、別に参観授業だけに限らず、普段の授業でも子どもたちを飽きさせないために、重要な視点だと思いました。
保護者の気持ちを考えよう ~3つのポイントに+αで~
私も3人の子どもをもつ保護者ですから、授業参観に行く保護者の気持ちがわかります。冒頭にも書きましたが、すべては以下の言葉に集約されます。
保護者は我が子しか見ていない!
保護者は、教師の授業テクニックなんて見ていません。発問がどうとか、個に応じた指導をしているかなんて、同業の保護者くらいしか見ていません(笑)。
保護者は担任がどういう人であるのか判断するのに、まず子どもから聞く話がベースになります。そして、授業参観で担任の様子を見て評価をしていきます。ですから、保護者は我が子しか見ていないということを念頭に置いて、以下の点に気を付けて授業に臨んでください。
子どもの発言は丁寧に扱う
私が担任した子の保護者から、その子の妹のクラス担任について、こんなことを言われたことがあります。
「妹のクラスのA先生ですが、子どもたちに発表はさせるのに、良い発言をした子の意見しか黒板に書いてくれない。うちの子が言った意見は先生の意にそぐわなかったみたいで、適当に流されちゃいました。」
A先生は、授業を円滑に進めたかったのでしょう。緊張もあったかもしれません。自分が意図しない発言をされて動揺したのかもしれません。しかし、保護者にとっては、我が子しか見ていないのですから、「先生がうちの子の発言をきちんと扱ってくれなかった」と思わせてしまったのでしょう。
私は子どもに意見を発表させるとき、以下のことは必ず守るようにしていました。
・発表されたことを板書するなら、たとえ似た意見でも全て書く。
・教師の意図と違う意見でも受け入れ、共感できるところを褒めてあげる。
・明らかに違う答えの場合、すぐにわかりそうなら優しく間違いを指摘して、言い直しをさせる。答えられない場合は、考えられたところまでを褒めてあげる。
・間違った意見を、「実はそういう間違いをしやすいことを先生は言いたかったんだ。」とフォローをする。そして、間違えた意見のおかげで授業が深まったという流れにもっていく。
「答えを間違えてしまっても、否定しないで優しく聞いてくれる先生」「発表しやすい雰囲気を作ってくれる先生」と保護者に感じてもらえることが大切ですね。
以上のことは、普段の授業から意識してやっていました。普段からやっていないと参観授業ではできないと思います。人権意識の高い先生なら、上記のことは当たり前にやっていることです。
1時間の授業の中で、全員の子に接する
特別なことをする必要はありません。「できたね!」とか「すばらしい!」という一言をかけるだけでもいいです。「できたね!」なんてたった1秒くらいのことですが、保護者から見れば、うちの子に個別に関わってくれたと感じるものです。
特別に難しいことではありません。普段の授業から意識してやってみるとよいと思います。子どもの発言に対して、必ず何か一言褒めましょう。
大きな声で授業をする
授業の進め方が上手かどうかは保護者にはわかりません。しかし、声の大きさが適切かどうかは誰でもわかります。指示が出た後、子どもが何をしたらよいのかわかっていない場合、たとえ本当にやることが理解できていなくても、「先生の声が小さいから伝わっていないんだ!」と保護者は思います。
教師の声が元気でハツラツとしていれば、保護者にも好印象を与えますよ。
笑顔で授業をする
メラビアンの法則というものがあります。それは、人の印象は視覚からが55%、聴覚からが38%であるという実験結果から導き出された法則です。
教師だけでなく、どんな職業であっても、笑顔で接することができる人は相手に良い印象を与えますよね。
以下の記事にもメラビアンの法則について触れています。
まとめ
参観授業は、見せる相手が保護者なので、通常の校内研修で行う授業とは視点が違います。良い授業をして、保護者から信頼される先生になってください。
それでは、保護者を納得させる、参観授業づくりの3つのポイントをおさらいします。
①全員の子どもが活動する場面をつくる。
②親子でいっしょに考えられる問題を出す。
③バラエティーに富んだ授業活動を組み立てる。
保護者と接する機会は、1年のうちにそんなにあるわけではありません。共働きの家庭が多い今日です。仕事を休んで授業を見に来る保護者に、子どもたちのがんばる姿を見せてあげたいですね。
最後に。途中で紹介した「向山型参観授業づくりの法則」ですが、「向山型で算数授業の腕を上げるシリーズ③」と頭についています。中身は当然算数の実践ですが、参観授業全般に役立つ情報が冒頭にまとめてありますので、参考にさせていただきました。
発行は2001年ですが、今読んでもとても参考になります。私は、この本を所持してから、参観授業が苦でなくなっただけでなく、「どんな授業をしようかな?」と考えられるようになりました。