元公立学校教員のぴーちょこです。
小学校の子どもたちにとって、学校生活の中の楽しみの一つが「席替え」です。
席替えをしばらく行わないと、「先生、席替えまだですか~?」と聞いてきます。とにかく、子どもたちは席替えを楽しみにしているのです。
しかし、席替えをきっかけに学級の雰囲気が悪くなったり、最悪な場合だと学級の荒れにつながったりすることもあります。
別に脅したいわけではありません。席替えの意味とやり方を正しく理解しておかないと、そこから学級のほころびが出てくるのです。
逆にベテランの先生たちは、席替えを上手に行って子どもたちの気持ちを満たしながら、学級の雰囲気をさらによくしていきます。
どういうことに気を付けて席替えを行うとよいのか、私が行ってきた席替えをもとに説明していきます。
席替えは生徒指導だ
「席替えは生徒指導の一つである」と考えましょう。席が近い子、とりわけ隣同士は関係が濃くなります。授業であれば、隣同士でペア学習をするなど、話す機会が多くなります。
教室内には、さまざまな人間関係があります。そのため、意図的に隣同士にしたい子たち、できるだけ隣り合わせたくない子たちがいるでしょう。
いやいや、誰とでも仲良くできなければダメだ!だから、誰が隣に来ても文句を言ってはいけない!という先生がいます。もちろん正論ではあるのですが、だからといって考えもしない席替えをするのは、学級経営に繊細さが足りません。
学級を育てるためには、教師の意図的な座席配置も必要です。
席替えの方法はいろいろありますが、必ずそこに教師の意図があることが重要です。
子どもに流されない
先ほど、「席替えは生徒指導の一つである」と言いました。ですから、席替えをするときに、子どもの意見に絶対に流されてはいけません。
席替えは子どもたちにとって、楽しみな出来事です。そして、誰でも仲の良い子と隣同士になりたいと思っています。多くの子は、席替えで決まった新たな席に納得するのですが、中には適当な理由をつけて、席を変えようとする子がいるかもしれません。
そんな子の言うことを聞いて、一回決まった座席を変更したらどうなりますか?「先生に言えば変えてもらえるんだ」となります。
例えば、一度決まってから、「先生、私は視力が悪いので、この席だと見えません。変えてください。」と言ってきたらどうしますか?
「そうか、見えないなら仕方がないな」と思って、変えてあげますか?ダメです。もしかしたら、見えないというのは口実で、実は仲の良い子が前にいるのかもしれないし、隣の子が嫌なのかもしれません。
そうならないように、席替えにはきちんと約束事を作っておく必要があるのです。
約束事を作っておく
それでは、どんな約束事を作っておくとよいのでしょう。私の場合は、以下のような約束事を作っておきました。必ず、1回目の席替えの前に伝えておきます。
視力が低い子は前の方の座席にする
視力が低い子は、前の方の座席にすることを伝えておきます。ただし、メガネなどで見えるのであれば、前の方でなくてもよいことにします。
判断基準は、視力検査の結果です。視力検査の結果がよくなかった場合は、本人が見えるから後ろがいいと言っても認めません。
席替えに文句が出たら、全て先生が決める
私は基本的にくじ引きで席替えを行っていました。(詳細については後述します。)
その際、「くじ引きだから、誰が近くに座るかわかりません。もし、え~!という文句が出てきたら、それを聞いた子はどんな気分になりますか?」と聞きます。
すると、「嫌な気持ちになる」と答える子がいます。そう言わせてから、
「そんな嫌な気持ちになる子がいたら、席替えする意味はないよね。だからもし、席替えに文句を言う子がいたら、座席を戻し、今後は全て先生が決めます」と伝えます。
ポイントは、真剣に聞く雰囲気を作ることです。そうでないと、文句を言う子が出てきます。
私が見てきた子どもたちで、文句を言った子は一人もいませんでした。
実は、席替えに限らず、集団で何かを決めるときに納得できなくても、文句を言わない指導をすることは大切です。集団で生活する以上、自分の思い通りにならないことは多々あります。
男女は市松模様で配置
座席の配置は、男女が市松模様に並ぶようにします。つまり、くじ引きをやるにしても、男女が座る場所は決まっているのです。
男女を市松模様にする理由は、
- 男女の関わりを増やすため
- 授業中の余計なおしゃべりを減らすため
の2つです。
休み時間になると、男子は男子で、女子は女子で遊ぶことが多いですよね。もちろん、男女仲良く遊ぶ子たちもいます。でも、やはり男女間の交流が少なくなりがちです。そのため、男女を交互に配置するのです。
もう一つの理由は、授業中の余計なおしゃべりを減らすためです。男子同士、女子同士が固まると、どうしてもおしゃべりが増えがちです。
別におしゃべりの全てがいけないわけではないですが、余計なおしゃべりを減らしたいので、私は男女交互にしていました。
くじ引きを使った席替えの仕方
それでは、くじ引きを使った席替えの仕方を紹介します。これは、私の場合ですので、必要に応じてアレンジしてください。
まず、私が行っていた席替えを簡単にまとめると、
- 視力の低い子は前
- 男女は市松模様で配置
- あみだくじに名前を書かせる
というやり方です。
視力が低い子が複数いる場合は、前の座席でくじ引きをさせます。そして、それ以外の子どもたちでもくじ引きをさせます。また、男女を市松模様で配置するので、男女別でくじを作ります。
つまり、①前の座席の男子くじ、②前の座席の女子くじ、③通常の男子くじ、④通常の女子くじの4種類を作ります。
そして、くじはあみだくじです。ここがポイントです。
あみだくじは、下半分を切り取って、教員が持ちます。上の半分を子どもたちに回して名前を書かせます。
ここで、必ず言っておくことは、「くじは早く書いたからと言って、希望の席になりやすいわけじゃないからね」ということです。
こうやって言っておくと、誰から書くかで文句を言わなくなります。
子どもたちが名前を書いたら、自分が持っているあみだくじの半分と合わせます。なおこの時、くっつけたあみだくじを子どもたちに見せません。
どうしてかというと、座席を教師の意図した配置にするためです。あみだくじをたどっているふりをして、教師が意図した座席を黒板に書いていきます。
え…それってインチキじゃ…。そうです。インチキと言われても仕方ないです。でも、「席替えは生徒指導の一つ」なんです。
私は、隣り合わせにしたくない子とか、教育効果を考えて隣同士にしておきたい子たちのみ、意図的に配置を決めていました。それ以外は、くじ通りの座席配置にしていました。
黒板に新しい座席を書いたら、あみだくじはさっさとポケットにいれるなどして片付けます。そして、間髪入れずに、机を動かすように指示を出します。
子どもたちは、きちんとくじで座席が決められていると思っています。子どもたちにワクワク感を感じさせながら、教師の意図する座席配置を盛り込むのです。
席替えが終わったら、さっさと次のことをする
席替えをすると、喜ぶ子もいますが、がっかりしている子も中にはいます。子どもたちは約束通り、思った通りの席でなくても文句はいいません。ただ、がっかりしている子がいるかもしれません。
でも、変にフォローをしようとせずに、さっさと次のことをしましょう。子どもたちは、がっかりするのは一瞬で、すぐに新しい座席に慣れます。
まとめ
何度も繰り返しますが、「席替えは生徒指導の一つ」です。そのために大切なことは、
子どもたちに流されないこと
です。席替えで子どもの言いなりになってしまえば、学級は荒れてしまいます。そのため、教師が明確な意図をもって行う必要があります。
席替えは子どもたちにとって楽しい出来事の一つです。教師が決めた約束事の中で席替えを行っても、子どもたちは十分に喜びます。
席替えによって、子どもたちがさらによい人間関係を築いたり、意欲的に授業に取り組めたりできたらいいですね。
今後の席替えの参考にしていただけたら幸いです。